第157話馬鹿にしてるの?この私を


 しかしそれは魔術段位十の魔術を使える事を前提とした戦い方なためこの世界とギルティ・ブラットとの魔術レベルの差がクロに違和感を与えるのだが、無効化されると分かっていても攻撃の手を緩めず、そして底段位の魔術を繰り出しているあたりルルは何かしらの方法で底段位の魔術をクロに当てるないし、クロに当てた魔術を生かす何かしらの方法があると考えるべきだろう。



 それに対してアルは何故ルルは意味のない攻撃を繰り返すのか、何故クロはその意味のない攻撃を打ち消して行くのか全く理解できず、しかし神成者であるルルと大魔王であるクロとの戦いである為無駄な行為ではない事だけは理解できるが、それだけである。


 意味のない攻撃を繰り返し打ち消して行く事が何を意味しているのかアルには逆立ちしても解らないという事だけは分かるのだが、それがもどかしく感じてしまう。


「そろそろ無駄な足掻きは止めたらどうだ?火の魔術段位五【集中砲火】」

「そう言いながらも私の攻撃を打ち消している貴方にはこれが無駄な行為ではないと理解しているのではないの?【目眩まし】………へ?」


 やはりルルは意味なく底段位の魔術を繰り出していたわけではないみたいなのかその事を理解しているだろうクロに対して少し意外な顔をした後、クロが詠唱した魔術を打ち消そうとするのだがクロの魔術は打ち消されずルルに直撃する。


「戦い慣れしているみたいだが、強者との戦いが少ないのが貴様の最大の弱点だと知れ」


 そう言うとクロはもう一度【集中砲火】を詠唱し、ルルへと着弾させる。


 そして先ほどと同じ様にカウンタースペル【目眩まし】を使いクロが詠唱し、ルルへと迫ってくる魔術【集中砲火】を今一度打ち消そうとするも虚しく【目眩まし】は無残にも【集中砲火】に掻き消されてしまう。


 その光景にルルは信じれんないものを、そして目の前の魔術という奇跡を否定したくなる衝動に駆られ、小刻みに震える。


「あなた、いったい何なの?その魔術はっ!?まさかこの世界に秘伝とされてきている上位魔術では無く段位五程度の魔術で私の知らない効果の魔術を使って来るなんて……貴方いったい何者なのよ?」

「何者かと言われれば今の俺は職業は肩書きだけの大魔王であり、現実はその日暮らしの絶賛フリーター中の講師だと言えば良いのか」

「……馬鹿にしてるの?この私を……っ」

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