第80話私の夫です

「ムカつく事はありますが、姉妹のような存在ですのでそこまでの感情は抱けないですね」

「だよね。まあこの場合私がお姉ちゃんかな? 胸的にも」

「ぜ、前言撤回します…今日という今日は…」

「落ち着きなさいミセル。レイチェルも一言多いですよ」

「……わ、分かりました。セラ様に免じてここは矛を収めましょう」

「ごめんなさい…」


 そしてまた二人がじゃれあいはじめたので落ち着かせる。


 なんだかんだで仲がいい証拠ではあるのだが、今は静かにしてもらわないと話が先に進まない。


「そうですね、レイチェルの質問ですが、あなたたちと同じですよ」

「…わ、私達と同じ?」


 そしてレイチェルの質問にやっと答える事ができたセラだがミセルもレイチェルも理解でいないでいるようだ。


「そうです。人族や魔族、精霊族などと種別で考えるから難しいのです。どの種族も、言葉を喋り互いに意思疎通が出来ます。ただそれだけです。人族だから、魔族だからと考えるから難しいのです。クロ様は私たちを種族で分け隔てたりせず同じように接してくださいます。そしてその中の誰よりも強く正しく尊い存在、それがクロ様で、魔王ではなく今は大魔王様です」


 説明してる途中からクロ様への想いが溢れ出し、説明に熱を帯び始めるのだが、それでも新しく仲間になった二人は納得いかない顔をしている。


「でも…魔族は我々の同胞を殺して来た…」


 そしてレイチェルがその不満を口にする。


 そんなレイチェルの前にウィンディーネが歩み寄りセラの代わりに語りかける。


「人間も数え切れない魔族を殺している」

「そ…それは…」

「では、魔獣や獣はどうなる? 彼らもまた人間の命を日々奪っている」

「……」

「なぜ魔獣や獣は憎まず人族は魔族を、魔族は人族を憎むか分かる?」

「…いえ」

「お互いにお互いを解り合えると分かっているから、お互いがお互いを傷つけると腹が立つし許せないと思ってしまう。何で理解してくれないんだ? …と。でも、人族も魔族も要求するのは自分の都合だけで相手の事は二の次。だから分かり合えない。クロ様はそんな小さいこと気にしない御方で、私の夫です」


 レイチェル達に説明した事よりもクロ様の事について話せた事に満足するウィンディーネなのだがその肩をセラが掴む。


 その顔は微笑んでいるのだが隠しきれない苛立ちが滲みでてきている。


「ウィンディーネ、最後の一文…聞き捨てならないのだけれども?」

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