第69話これだから男という生き物は

 言葉にはしないもののセラもルシフェルと同じ気持ちなのかルシフェルに同調して頷いている。


「この戦いは見たところ己の信念をかけた一対一の正式な決闘であろう。 例え我々にクロ様と同等の力を持っていてこの戦いに加勢し勝利してもクロ様は喜ばれないであろう」


「…………」

「…………」


 そして二人の天使はバハムートの言葉を耳に入れると「これだから男という生き物は……」という目をバハムートに向けるのであった。





 そんなやり取りが自らの家臣の間で繰り広げられてるとは露知らずクロは必死にアーシェの猛攻を防いでいた。


 その猛攻はクロの選択肢の中から隙を見て攻撃する事を無くさせてしまうほどであった。


 クロに出来る事は今までの経験則から来るであろう攻撃を数通り予測し、ひたすら防いでいく事のみである。


「どうしたのお兄ちゃん、さっきから防いでばっかりだよ?」

「……っ、」


 アーシェにかけられた言葉に目だけで返すクロ。


 アーシェの猛攻はクロに言葉で返す余裕すら無くさせるほどクロを追い詰めていた。


 それとは対象的に余裕の表情を浮かべ笑みを浮かべるアーシェ。


「防いでばかりいないでたまには斬られてよねえ。 斬られてよねえ。 ねえねえねえねえ」


 しかしクロにとって幸運なことはアーシェが繰り出す技の応酬はギルティ・ブラットで覚えられるスキルと同じモーションばかりだという事であるが、技とスキルの攻撃スピードも違えば攻撃箇所も違い、攻撃する時の技名もスキルと違い必要ないためクロからすればゲームのスキルと同じモーションだからなんとか防げているだけでしかない。


 しかし刃を交える度にアーシェの攻撃は勢いを増し、様々なフェイントも織り交ぜて来る。


「ガハッ!?」


 そしてアーシェから何度目かの攻撃を防いだ時、クロの腹部に強烈な衝撃が襲い、門の向こう側にあるノクタスの街まで飛ばされる。


 クロの意識がアーシェの刃に集中し始めた事を感じ取ったアーシェは、クロの横腹に蹴り技を入れ、ノクタス側まで吹き飛ばしたのである。


「【集中砲火】」


 そしてクロが飛ばされた先、土煙が舞う中から魔術詠唱が聴こえ、無数の火の玉がアーシェに撃ち込まれる。


 この魔術【集中砲火】は火の段位五の魔術で威力は段位四しかないのだが追加効果にカウンタースペルにより打ち消されない効果を持っているため多少距離があっても安心して使用できる魔術の一つである。

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