第49話
「そして貴様ら兄妹は何か勘違いしているみたいだな……よっと」
「あ、あぁ…つっんぅ…っ!」
そういうとクロはキュートスの胸の奥に手を沈め、その奥にある心臓を鷲掴みすると水魔術段位五の魔術【ホーリー・ヒール】を無詠唱で唱える。
するとキュートスの心臓部分から薄い水色の光を放ち始める。
けして、後ろにいる天使二人から立ち込める殺気に気後れしたため本来の目的を遂行しようとしたわけではない。……胸を揉む意味が有るのかというのは黙秘させてもらう。
「これで貴様の心臓に宿っていた病は治ったと思う。正直いつ死んでもおかしくない状態だったぞ」
【ホーリー・ヒール】による治癒が終わると同時に光魔術段位三【真実の目】を使いルシファーとセラが施した魔術を開呪するとキュートスは足腰に力が入らないのかヘナヘナと座り込む。
「な、なぜ……なぜ…なぜ?」
開呪され一層騒がしくなる戦場の中キュートスがクロに問いかける。
なぜ病が有るとわかったのか?なぜ敵である私を助けるような事をしたのか?
「そうだな……私が魔王だからだ」
そしてクロの魔王発言に戦場にいる魔族全員が否定するようなことはなく、また戦闘しようともせずただただクロを眺めているだけである。
さらに視界の端で伸びているガルムに【ヒール】を適当に射っておく。
「我が軍に告ぐ! 回復系魔法、回復系スキル、回復系ギフトを使える者は魔族人間関係なく治療にあたれ!」
そしてクロはその中に居るであろうウィンディーネを呼び寄せる。
すると空気中の水分が女性の姿を形作りながら集まってゆき、クロの前に半透明の美しい女性が現れる。
「ウィンディーネ、重症者の状況はどうだ?」
「はい。全員完全再生させる事ができました。また遺体の中から蘇生の見込みがある遺体450体のうち、100名生き還す事に成功し、300名が意識不明、50名が残念ながら傷を再生させるのみで蘇生する見込みは有りませんでした 」
「そうか。では残りの負傷者は他の者に任せてウィンディーネはまだ可能性がある300名にあたってくれ」
「かしこまりました。クロ様」
そう返事をするとクロに微笑みかけるウィンディーネ。しかし何故かウィンディーネから獲物を捉える寸前の肉食獣のようなオーラがにじみ出ていた。
「で、では俺は向こうに行ってくるよ」
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