第17話その姿はまさに炎竜
「俺はお前を……いや、この世界をなめていたみたいだ。 すまない」
だからこそ、敬意をはらい謝罪の意をしめす。
「それはお互い様だろ。 俺もお前を見下していた。 これから出し惜しみせずに本気で行かせてもらう」
ドラニコはそういうと先ほどと同じ構えを取る。
それを見たクロは木刀を、刀を鞘に納刀する動作で腰の左側へ仕舞うと左手で木刀を持ち木刀のグリップの部分を右手で添えて腰を落とす。
そう、スキル『抜刀』の構えだ。
「おい、武器を仕舞って……っ」
その動作を見てドラニコは武器を片付けてこの決闘を放棄するかのように見えたのだが、クロの目がドラニコに「手加減はしない」と殺気とともに語っていた。
「これは俺の国のれっきとした技を繰り出す構えの一つだ。武器を片付けていたわけじゃない」
「いいね……いいね! 今まで色んな剣士と試合をしてきたが一度も見たことねえぞそんな構えかた!」
「剣士ではなく侍だ。目に焼き付けておけ」
「お前こそ目に焼き付けておく事になるぜ? この俺をな! 『蛇炎』!」
そういうとドラニコは先ほどと同様疾突をくりだしてくる。しかしドラニコの口から疾突とは別の言葉を発していた。
ギルティブラッドで魔法を詠唱無しで発動できる条件は、自分の使える一番高い段位より二段下までの魔法までである。段位二の蛇炎を詠唱して発動させたということはドラニコの使える炎の段位は、ゲームと同じ計算なら段位四ということになる。
なのに何故ドラニコはそれよりも威力の低い炎蛇を出してきたのか、その答えは直ぐにわかった。
【蛇炎】
この魔術は炎でできた四匹の蛇が対戦相手目掛けて噛み付いてくる魔術スキルである。にもかかわらず炎の蛇はドラニコの持っているハルバードに巻き付き始めた。
攻撃の対象をギルティブラッドでは武器に指定できないためクロはさらに気を引き締める。
四匹の蛇が巻き付いたハルバードで疾走してくるそのモーションを見てバージョンアップにより新機能とサービスを追加したばかりのギルティブラッドをプレイしているような感覚を覚え、気付かないうちに気分が高揚してこの状況を楽しめているのはゲーマーの性か。
『疾突!』
「なっ!?」
さらにドラニコは疾突のモーションからさらにスキル『疾突』を発動させる。
ゲームでは意味のないプレイであるが、目の前の疾突は明らかに威力が上がっていた。
火の粉を振り撒き茜色に包まれながら自分に向かってくるその姿は美しく、その美しさが彼の努力を物語っている。その姿はまさに炎竜。
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