アイドル・チャレンジ!・1-2
輝いている――、確かにそうだ。その要因は、観客が心からアイドルの活躍を受け入れている、熱情の姿勢にあるだろうと、リプカは考えた。なるほど、最初に流行った地という要素は、いかにも重要であっただろう。
初動で形作られた価値観の重要――これもまた、常識の話。
そんなことをふと、思った。
「あ、アイドルソングのジャンルに限らず、アン様が仰っていた、アリアメル連合での流行りな曲も歌われるんですね――」
「アナタの星の瞳、星を散らした夜空の瞳。アナタはきっと自分の瞳の色を知らないから――ワタシの瞳を覗き込んで、その色を見つめて。確かめて、オカしくなってしまいそうなほどの、その淡く輝く瞳の色を、ワタシで――」
「ただアイシテルなんて空に向かって呟いて、拭った傷を隠して歩く。笑って君と向き合いたいんだ、君とお別れするときまで、ずっと――ずっと――」
「Check It! Check It! 3,2,1,GO!! ――――ネエどーして、いつの間にか、私の心の景色に! いろんな顔したアノ人がいつだっていて、もう消えないっ、もう目を逸らせない――! ねえ、Check It、知らなかったでしょ、ワタシ。Check It! Check It Out! 私――あの人に恋してる、恋してるんだってッ――!!」
「YaーーーYaーーーDaーーーYaーーー! ――DaーーDaDaDaDaDaDaDaDaDa――YaーーYeaーーーーー! DaーーーZuDaDaDaDaDaDaDa――!」
「――いやコレ、皆さん、上手すぎませんか!?」
「まー初動の印象もあって、敷居は高めに見られてますね。友達に『やってみれば』と言われるのも、印象値や歌の上手さで敷居の高さをクリアしている人が多いでしょうし。それに――この業界はやがてメジャーになるという確信の期待値を、皆どこかで抱いているのでしょう。マジにやってるリピーターも多い」
「確かに……メジャーになりそうな予感は、大いに感じられますね」
「でしてね。私もやってみたいですが……正体がバレたら、さすがに問題になりそうです。残念」
「私も陽気とは程遠いビジュアルですからねぇ。リプカ様、やってみられては? 私らここで飯食いながら見てますから」
「――その
「音痴なんですね……」
「意外でして」
そんなことを話してる間に、ぴょこりと立ち上がる小さな姿があった。
「私……やってみたい……」
「あ……サキュラ様。挑戦してみますか?」
「うん……」
ということで、サキュラがステージに上がることになったのだが――。
どうしてか、サキュラは遊びとは思えない真剣な表情で、衣装選びの段階から熱を入れて準備に勤しんでいた。
「私のカードを……使っていい……? 一番いい衣装で、歌ってみたい……。――ううん、自分の力で、ステージに立ちたいの。だから……オヤジとオフクロの力を、借りたいんだ……」
「そうですか……? ――分かりました。では、私たちはサキュラ様を、心から応援しています! もし心細くなってしまったら、ステージの下を見てみてください。ぜったい、元気が出ますから!」
「リプカ、ありがとう……」
サキュラの手を握って励まして――そこから先は、もちろん(アンを除く)二人の補佐はあったけれど、一生懸命にサキュラ自らが、色々を選んで。
「えらい気合い入ってますね。あ、私ちょっと、飲み物取ってきますねー」
「させませんッ! ――この機に乗じて、先程ステージに上がっていた殿方に声をかけにいくつもりでしょうっ! お見通しですよ!」
「チィ……ッ!」
そんな気の抜ける騒ぎ合いで過ぎていった数十分の後に、サキュラの出番がきた。
淡いオレンジの、可愛らしいキラキラな衣装を纏って、サキュラは物怖じせずにステージに立って、拡声器を両手で持ちながら、歌声を響かせた。
――結論から言えば、サキュラの歌は飛び抜けて上手いというわけでもなく、また他の人のように、曲に合った身振りや、ダンスステップを踏む余裕もなかったのだけれど、しかし可愛らしい子が一生懸命に頑張っているという贔屓目もあり、結果、結構に大きな声援が貰えた。
「緊張した……」
「サキュラ様、素敵でした!」
「きちんと立って、歌い通して、立派でして」
「お疲れさん」
周りのお客からも「よかったよー」と声をかけられて、サキュラは笑顔で、メロンソーダのシュワシュワに口を付けていた。
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