★★★ Excellent!!!
世界観がなんとも独特なハイファンタジー作品です。 関川 二尋
普通の人には見えないけれど、世界を構成し、人と共存している精霊という存在。
この作品世界にはそんな精霊が満ち溢れています。
この自然そのもののような精霊、彼らには彼らなりの理屈があり、それは人と相いれるものばかりでありません。
危ういバランスだったり、完璧な調和だったり、人とのかかわり方もそれぞれです。
主人公のセラはそんな精霊が見える少年です。
彼らの声を聞き、彼らと意思の疎通ができる稀有な存在。
だがそれだからこそ、彼は禁忌に触れる大きな事件を起こしてしまいます。
追放される形で居場所を失った少年は、本当の自分を探す旅に出ます。
そしてそんなセラを追いかけるもう一人の少年、セラの弟・トニヤ。
物語はこの二人の過酷な旅路を追いかけていきます。
そして旅の先々で特異な精霊たちと出会い、戦い、人と精霊の様々なあり方に接していくのです。
その旅路の果てに彼らが辿り着いたのは……
という話なのですが、この旅路のストーリーがまず面白い。
読みやすい語り口はもちろんですが、少年たちの心情が実にリアルに細かく書かれています。
自然とふたりの旅路を応援したい気持ちになっていくのです。
さらに登場する精霊たちの独特な存在感。
脳裏に想像されるその異形な姿、異質な思考、そんなものが鮮やかに脳裏に浮かんできます。
あっという間に世界観に引きこむ文章力、作品の持つ雰囲気がじつに心地よい作…
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