第116話 闇に溶ける 1
「随分警戒されてますねー」
「う、うるさいな」
ライアがいつもの調子で言った。
別にリディア達の邪魔なんてする気はない。
正直今はセシルが気になっている。
最初は可哀想な娘と思ったが、そうではなく控えめなセシルに好感がある。
魔法草の栽培にもついていったが、セシルは真剣でその姿にどこか惹かれたと思った。
魔法草のせいであんな顔になったのに投げ出すことなく懸命な姿にどこか心を打たれたのだ。
「レオン様、リディア様と侍女のマリオンさんが髪を結ってくれました」
「リディアが?」
「はい、髪飾りもリディア様が着けて下さりまして」
褒めても不愉快にならないだろうか、そう思ったがライアが来る前にセシルは自信がないと言っていた。
私の気持ちを伝えると自信がつくでしょう。と教えてくれた。
そのライアの言葉を信じ、素直にセシルに伝えた。
「セシル、凄く綺麗です…」
思わず敬語になった。
「ありがとうございます」
「…今度、私が髪飾りを贈ってもいいだろうか」
「…はい。楽しみにします」
そして、ヒースもオズワルド達もいない為に二人だけで晩餐をした。
セシルと二人の晩餐は楽しかった。
穏やかで柔らかいセシルに癒されていたと思う。
「セシル、明日にでもリンハルト男爵を訪ねようと思う」
「父をですか?」
「ライアと相談したのだが、闇の魔力は珍しいのだ。セシルは魔法草が好きだし、魔法草の専門の薬学を学んではどうだろうか。王都の学校なのだが」
「学校ですか?」
「そうだ。推薦状も私が書く」
「レオン様はこの村にいますよね?」
「…私は問題を起こして、自分からここに来たのだ。すまないが今はまだ王都に帰るつもりはないんだ」
セシルは悲しそうに下を向いてしまった。
「…一晩考えていいでしょうか?」
「勿論だ。…それに、もし王都の学校に行っても私が会いに行っていいだろうか?」
「来て下さるのですか?」
「必ず会いに行く。その時は私と話をして欲しい」
「…はい!」
きっと、セシルはこの提案に乗るだろう。
セシルにいつも会えなくなるのは淋しいが、私の我が儘を言ってはいけないと思う。
セシルの学費も私が出すつもりだ。
私の個人資産はほとんど兄上の宮の弁償に当てたがセシルの学費ぐらいは何とかしないといけない。
兄上のようにもっと経済も勉強していたら、個人資産も増やしていたかもしれないが、今までの私はそうしなかった。
こんな所にまでツケが回って来たのだ。
挫けそうだが、ライアはまだ若いんだからこれから頑張ればいいと言ってくれた。
いじけている場合ではないのだ。
そして、晩餐も終わりセシルを部屋に送ろうと席を立つと、村にある魔法騎士団から、ライアに応援要請が来た。
「失礼します!第1級魔法騎士のヒース様から応援要請です!ライア様とこちらにおられるブラッドフォード公爵様をお呼びです!」
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