第98話 初夜にドアはなくなった

初夜の晩、私は困っていた。


心の準備が出来てないから行きたくない。

マリオンは支度を済ませると、明日の朝食はお部屋にお持ちします、と言って笑顔でさっさと出ていくし。


ナイトドレスはこれでいいのか。

いつ行くのが正解なのか。

どんな顔をして行けばいいかわからない。


待たせるとオズワルド様は絶対来そう。

先手を打ち続き部屋のドアには鍵をかけた。

勿論部屋の入り口にも鍵はかけている。


あと1ヶ月ぐらい待って下さいと言うと怒りそう。

そして、部屋の中をぐるぐる歩いているとオズワルド様はやって来た。

ガチャガチャとドアを開けようとしている。


「おい!何で鍵を閉めるんだ!開けろ!」

「もう少し待って下さい!」


今心の準備をしています!


「いいから開けろ!」

「嫌ですよ!」


壊すような勢いでドアを開けようとされると怖い!

益々行きたく無くなって来た。


「ちょっと心の準備をしてますから!」


ドアの前でそう言うと、ドアが滲むように真っ黒になってきた。

ぎょっとすると、ドアが真っ黒のものに溶かされるようにドプンと沈んだ。


「キャーッ!何をするんですか!?ドアが無くなりましたよ!!!」

「やかましい!これ以上待たす気か!?」

「プライバシーはどうなるんですか!?これではプライバシーの没収ですよ!?」


ドアがないと丸見えですよ!


「ドアなんかもういらん!」

「いるに決まってます!」


どういう神経してるの!?

襲いかかってきそうなんだけど!


「少し落ち着いて下さい。私にも心の準備というものがあります」

「何の準備だ」

「…私、初めてなんですよ」

「何の問題もない」


私が問題があります!

経験がないんです!

初体験なんて人生の一大イベントです!


「山小屋で俺としとけば良かったと言っていたではないか」


私が!?そんなことを!?

しかも、山小屋では裸でしたよ!

思い出すと、今さらながらまた赤面してしまった。


「き、記憶にないんです!…もしかして、裸を見ましたか?」

「全て見た」

「そういう時は見てないと言って下さい!」


焦る様子もなくしれっと言うオズワルド様に、益々顔が熱くなる。

しかも、ジリジリ寄って来ているし!


「何故見たものを見てないと嘘をつかねばならん」

「恥ずかしいんです!」


両手で顔を押さえ、勢いよく後ろを向くと、いきなり抱き上げられた。

恥ずかしいと言っているのが全く通じてない。


「これ以上待つつもりはない」

「…痛いのは嫌です」

「最初だけだ」

「…後1ヶ月くらい待つのは?」

「却下だ!」



オズワルド様に横抱きでベッドに連れて行かれ、押し倒すように寝かされた。

そして、何度も好きだ、と甘く言われながらキスをされ、初夜は始まってしまった。




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