第33話 一時の休息

狩りを始めると、オズワルド様は本当に一番に山鳥を射った。


「オズワルド様、お見事です」


そう言うと、オズワルド様は満面の笑みだった。

どんだけ、お見事と言って欲しかったのか。

有言実行のオズワルド様に驚いた。


その後は、ヒース様が山鳥を射ち、アレク様も難なく山鳥を射った。


「お見事です」


私はそれぞれに、軽く手をあわせて、お見事です、と言った。

和やかに会話しながら、ゆるりと狩りをしていると、一頭の馬に乗った方がやって来た。

乗っている方は邸に残っていた警備の方だった。

到着すると、馬から降りアレク様に片膝を突き報告を始めた。


「アレクセイ様、レオンハルト様が急遽お帰りになると言われまして」


私は内心ガッツポーズをしたが、顔には出さないようにした。


「急にどうしたんだ?」

「わかりません。ご理由をおっしゃらないので」


アレク様はよくわからず困惑していた。

アレク様の後ろにいたヒース様は、おい、とでも言うようにオズワルド様を見た。

オズワルド様はシレッとしている。


「行き掛けからおかしかったが、何かあったのか?」


アレク様がオズワルド様と私を見た。

私にフラれたからと言っていいものか。


「オズワルド様、どうします?」

「俺が言おう」


アレク様は察したように、警備の方に、レオンと先に帰りまた明日ブラッドフォード邸に来い。と指示を出していた。


そして、下僕達に昼食の準備をしてもらい、敷物の上に四人で座った。


「さあ、話せ。何があった」


アレク様は、何でも聞くぞ、という体で構えた。

そしてオズワルド様は、玄関先のことを話した。

話を聞いていると、オズワルド様はずっと最初から見てたな、とわかりジロリと見た。


「では、レオンはリディアにフラレて帰ったということか」

「隙あらばと思って来たのかもしれないがリディアはやらんぞ」

「わかっている。レオンのことは王宮に帰ってから諭す。婚約者も決めさせるから心配するな」


アレク様はため息をついていた。


「リディアもオズが好きなんだな」

「はい…私はオズワルド様をお慕いしてます」

「そうか、レオンが悪かったな」

「アレク様のせいではありません」


そうです。

アレク様のせいではありません。

帰ったら、どなたでもいいのでレオン様に婚約者を決めて下さい。


アレク様は、きっとレオン様との一緒の休暇を楽しみたかったのだろう。

何だか、残念そうに見えた。


話が終わると、少し休むと言い、アレク様がゴロンと転がった。


「ヒースもオズも休め。狩り場は警備もいるし、リディアも疲れただろう」


ヒース様は、膝を立て少し体を崩していた。

オズワルド様は、私の膝に転がってきた。


ちょっと!ナチュラルに膝枕をしないで欲しい!


私も転がりたいが、アレク様やヒース様の前で転がることは出来ない。


「オズワルド様」


膝枕をするな、という表情で訴えてみた。


「俺をお慕いしているんだろう」


あの話の流れで嫌だとは言えない。

それに、オズワルド様を好きになってきているのは本当だ。


「今だけですよ」


しょうがない、と思いながら一時の休息を取っていた。





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