SF ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years
第4章 1963年 - すべての始まり 〜 6 剛志の勝負(3)
第4章 1963年 - すべての始まり 〜 6 剛志の勝負(3)
6 剛志の勝負(3)
――あの頃、あそこにいたのが、俺だったのか……?
あの事件の後から見かけるようになって、店の奥でいつも一人静かに飲んでいた男。
顔は浮かんでこなかったが、あれが今の自分だとここで初めて思い当たった。
するとそんな気づきに押し出されるように、記憶の端っこでくすぶっていたシーンが一気に脳裏に浮かび上がった。
――じゃあ、あれはいったい……いつのことだった?
そこまで思って、部屋でいきなり立ち上がる。慌ててカレンダーに目をやって、
――そうだ。あの日も今日のように、真夏のような暑さだった。
そう思った時には畳を蹴って、靴のかかとを踏みつけながら外階段を駆け下りる。
その時ちょうど、一台の自転車がアパート前を通りかかった。
いきなり飛び出た剛志を避けようとして、慌てて中年男がハンドルを切った。
あ! と思った時には自転車は倒れ、男も地面に勢いよく転がった。
「この野郎! 気をつけやがれ!」
と、背中から聞こえたが、立ち止まることなく走り続ける。そうして到着した先は児玉亭で、幸い常連たちもまだ来ていない。剛志は胸を撫で下ろし、いつもと一緒の一番奥に陣取った。
それから普段より少し大きな声を出し、
「親父さん、瓶ビールください。もう、暑くて暑くて……」
噴き出す汗を必死に両手で拭うのだった。
それからいつものメンバーが一人二人とやって来て、ほどなく全員が顔を揃える。
さらに何事もなく三十分くらいが経った頃、
――今日じゃ、なかったか……?
そう思い始めたそんな時だ。
「おお! ムラさんじゃないか! 何そんなところに突っ立ってんだよ、早く入れって、そんなところに立たれてちゃ、またこの店、閑古鳥が鳴いちまうぜ!」
そんなアブさんの声が響いて、剛志は慌てて顔を上げた。するとムラさんが店に入ってくるところで、伏し目がちに店の奥へ視線を向けて、さもバツが悪そうに呟いたのだ。
「正一さん……久しぶり……」
そこからは、剛志の記憶にあるままで、すぐに厨房から高校生の剛志が現れる。
「何が久しぶりだよ! 今頃ノコノコとよく来れたもんだぜ!」
「よさねえか剛志!」
後ろから響いた正一の声にも、彼の勢いは止まらなかった。
「金はちゃんと持ってきたのかよ? まさか殺人容疑者のいる店から、またタカロウって魂胆じゃねえだろうなあ?」
「よせって言ってるだろ!」
ここでやっと確信に至った。
間違いない。もうすぐこの場で、ずっと後悔し続ける事件が起きる。
――この後すぐに親父の手が出て、俺は思わず、「何しやがんだよ!」って叫ぶんだ。
それからたった数秒後、記憶通りのシーンに思わず身体が勝手に動いた。
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