第107話 弟子の危険性
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「これ、素材使うより私の魔力使った方がよくないですか?」
ちょっとお高めの魔力ポーションを使うとは言え、素材の値段よりは
それに、青真珠足りてないんだから、使わない方がいいよね。
するとミカエルさんは、ぐっと苦しそうな顔をした。
そして、はぁ、とため息をつく。
「その通りだ。それは認めざるを得ない」
「じゃあ、魔力使います?」
またミカエルさんが苦しそうな顔をする。
「……そうだな。そうしてもらえると助かる。だが、足りている分は素材を使うようにしてくれ。セツの体に負担がかかりすぎる。金などどうでもいい」
「負担なんてないですよ。倒れるほど使わなきゃ大丈夫なんですよね?」
「それはそうなのだが……」
普通に魔力を使う事が負担になるなら、魔法で戦う人たちはものすごい負担を負っていることになる。
ミカエルさんは私の事を大事にしすぎだと思う。
最初はあんなに横柄だったのに。
「えと、じゃあ、できるだけ素材を使って修理するようにしますけど、足りない分は魔力を使うって事で」
「そうだな。それで頼む」
ミカエルさんの了承を得て、私は次の盾に手を添えた。
素材の余裕がある間は、素材を使って修理する。
失敗しないようにしないと。
魔石を手に取って、精神統一。
素材を使って修理~、と念じながら。魔石を近づけて――。
「よかった。上手くいった」
そうやって、次々に水竜の盾を素材で修理していった。
コツがつかめたのか、全部素材でできた。
そして青真珠の不足している盾の前に立つ。
「待て」
盾の上に乗せてあった素材をテーブルの上によけようとしたら、ミカエルさんに止められた。
「青真珠分だけを補う事ができるかもしれない。他の素材はそのままにしておけ。それなら負担も少ないだろう」
なるほど。
私は素材を盾の上に戻した。
でも、部分的に魔力を使うって――。
「どうやるんでしょう……?」
私を支えようと後ろに回ったミカエルさんを振り返って
「わたしにわかる訳がないだろう。魔力で修理したことがないのだぞ」
そりゃそうだ。
「素材を使うつもりでやってみます」
魔石を持って盾に近づけていく。
こつん、と盾に当てる。
すると、魔石の魔力だけが抜けた。失敗だった。
「ふむ。やはり欠けている素材だけを埋めるのは無理か」
「もう一回やってみます」
新しい魔石を持って、集中――。
が、失敗した。
「駄目みたいです。魔力使いますね」
「ああ」
後ろのミカエルさんが身構えた。
しかしここで問題発生。
あえて魔力使うって、どうやればいいんだろう?
素材を使って修理~って念じれば素材使えるようになっただから、魔力を使って修理~って念じれば魔力使ってできるかな。
なんか矛盾してるけど。
とりあえずやってみよう、と魔石を持って一呼吸。
魔力を使って修理~、魔力を使って修理~。
念じながら、こつん。
「失敗しちゃった……」
また魔石の魔力だけが抜けてしまった。
魔力を意図的に使うのって実は案外難しい……?
もう一度やってみたけど、やっぱり失敗してしまった。
「すみません。できないかもしれないです」
「気にするな。そのうち残りの青真珠も届くだろう。その後で修理を手伝ってもらえれば十分だ」
「はい……」
ミカエルさんはそう言ってくれたけど、今までなんとなくできていた物ができなくなってしまったというのは、衝撃だった。
自分の魔力で修理できるっていうのは、私だけができる素質だったのに。
なんだか自分の価値が減ってしまったように感じる。
「そんな顔をするな。水竜の盾を一瞬で修理できるのは並大抵のことではない。本職の修理屋だって難しいだろう」
うつむいた私の顔をのぞきこんで、ミカエルさんが言った。
どうしてミカエルさんには私の思っていることがわかるんだろう。年の功?
それとも私そんなにわかりやすいのかな。
「わたしは幼い頃から周囲の顔色を読み取ってきたからな」
また考えを読まれた。
「それって、良い子になるために、とかですか?」
「というよりは、汚い大人に
「暗殺!?」
びっくりして大声を出してしまった。
ミカエルさんは、しまった、という顔をした。
「幼い頃の話だ。気にするな」
それが嘘だと私にはわかった。
そうだよね。ミカエルさんは王子様みたいなものだもん。ウルド王の弟だっていうお父さんが王位を継げば、本物の王子様になる。
暗殺なんて、歴史やファンタジーの世界みたい。いや、ここはファンタジーの世界なんだけど。
たぶん、ミカエルさんは今も狙われる事があるんだ。
次に王位継承権を持つ人って誰なんだろう。その人か、その人が王様になったら得をする人は、継承権が上の人が死ねばいいと思っていてもおかしくない。
ひくっと私の顔が引きつった。
それって、弟子である私も危なかったりする……?
たとえば人質になるとか。
魔導具師ってだけで危ないって言われてたのに、ミカエルさんの弟子になってさらに危なくなった?
「大丈夫だ。護衛をつけてある。セツは普段通りに過していい。我が家の護衛は優秀だ。防御魔法も掛けてあるしな」
「えっ!? 私に魔法が掛かってるんですか!?」
知らなかった……! いつの間に!
「三重に掛けてある」
ミカエルさんはさも当然とばかりに言った。
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