第58話 箱ごと性質変化
私は壁際に置いてある選別前の
それぞれの箱に入っているのはだいたい五十から六十個。
そのうち五個に一つが
魔石一つだと怪しいから、二つ使おう。確率的には二十四個も
私は四段重なっている一番上の水流弾の箱に狙いを定めた。
その上で、両手に持った魔石を握り締めながら、
両手でやると、レモン
魔石の光が消えた後、箱を床に降ろして中の投擲弾を全部出してみると、
残りの箱でもやってみたけど、魔石を二つ使った場合の
魔石が一つだと
途中で追加された分も含めて選別前の箱を全部「当たり」に変えた私は、リーシェさんの所に報告しに行った。
リーシェさんは一階の受付で冒険者の対応をしていた。
そのパーティは魔導具の買い取りを依頼しにきたみたいで、肩に下げた鞄の中からカウンターの上の木箱に次々に魔導具を出していく。
絶対そんなに入ってないよね!? って量を出していて、マジックバッグだとわかった。超高級魔導具だ。
いいなぁ。私も欲しいなぁ。入れるものないけど。
なんか憧れるじゃん。
リーシェさんの横から、男の職員さんがいっぱいになった箱と
一番初めは、あんな風にいろんな魔導具がごちゃごちゃになったのを仕分けしてたんだよね。
あれはあれで、見たことがない魔導具がたくさん見られて面白かった。
最後に、パーティメンバーが身に着けていた武器や盾を箱の上に積んだ。ぱちんぱちんと留め具を外して
武具も売っちゃうの? って最初は思ったけど、結構多いんだよね。
マジックバッグに装備品は入らないから。
ただの服なら大丈夫みたいなんだけど、魔導具としての
ゲームだと、装備品って、相手の属性に合わせて切り替えるイメージだけど、ここじゃあそうはいかない。
ずっと冒険に出てるならいいけど、長距離移動する時とか、街に長居する時は邪魔なだけだから、その前には売っちゃうんだって。
魔導具は損耗率がたまると壊れるから、あんまり愛着とか湧かないみたい。
壊れちゃうかもって魔導具の能力を使わずにいたら、持ってる意味ないもんね。
いざって時に使おうと思って体力魔力全回復の回復薬を温存した結果、それを使わないままラスボスを倒しちゃうようなタイプには向いてない仕様だ。
もちろん、魔導具じゃない装備品はあって、それならマジックバッグにも入るんだけど、魔導具の方が――その能力を差し引いたとしても――性能が高すぎるから、それは予備って感じらしい。
私が仕分けをしていた時は、装備品は取り除かれてから作業部屋に運ばれてきていた。
だからあんまり見た事ないけど、ナイフは何度か触ったことがある。
どんな能力があるかわからないから、抜いてみたのはその一度きりだし、もちろんスイッチなんて入れてない。そういう冒険はしない主義だ。
そんなことを考えながら、ぼーっと受付カウンターを見ていると、リーシェさんが私に気づいた。
カウンターの横から出て私の方へと歩いてくる。
「セツさん? 何かありましたか?」
「えーっと……」
ここじゃ説明できない。
「上に行きましょうか」
「はい」
作業部屋に戻った私は、リーシェさんにやったことの説明をした。
「――というわけで、
「えーっと……?」
「魔石は一箱につき二つずつで足ります。でも、万が一ってこともあるので、できたら三個使わせてもらいたいです。それでも元はとれます」
「それは、構いませんが……」
「あ、やってみた方がよかったですよね? すみません、全部やっちゃいました。残しておいた方がよかったですね」
しまった。確かめるのに夢中になりすぎて、リーシェさんへの説明用の箱を残しておくのを忘れてた。
「仕分け済みの箱……いや、仕分けしてなくてもいいのか……とにかく
「いえ……やって見せて頂いても、私には見分けがつきませんので……」
あ、そっか。そうだった。
「じゃあ、
「……」
リーシェさんは顔に手を当てて押し黙った。
もう片方の手の平が、待てをするように私に向けられている。
「ちょっと理解が追い付かないので、少し時間をもらえますか……?」
「え、あ、はい。あの、選別しなくても全部当たりにできますってだけの話なんですけど……」
「それは、わかっています……。ただ、少し、お時間を下さい……。ギルド長とも話をしますので……」
「……わかりました」
よろよろと部屋を出て行くリーシェさんを、私は首を
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