第27話 新しい仕事
冒険者ギルドに戻ってから、ギルド長のヨルダさんの部屋に行った。
ソファに向かい合って座る。
「やっぱりそうなのね……」
リーシェさんが提出した記録用紙を見ながら、ヨルダさんはため息をついた。
二人が深刻そうな顔をしていて、私は不安になってきた。
魔導具師の素質があると言われてもよくわからない。
私はただ、自分が不発弾を選別できるってことを証明したかっただけだ。この世界の常識に
それが魔導具師の適性があるからだと言われてしまうと、なーんだ、という気分になった。魔導具師ならわかって当たり前。結局常識の範囲だった。
魔導具師は修理屋になれるんだっけ。
修理代が高いってことは、たくさんお金がもらえるってことなのかな? でも回復に必要な物があって高かったら、利益はそんなに出ない?
だいたい、修理ってどうやるんだろう。ドライバーで開けたりはんだ付けしたりするわけじゃないよね。武器は火に入れてカンカン叩いたりするのかな。
自分にできる気がしない。
修行とか必要? ゲームなら、経験値をためたりクエストをこなしたりすればレベルアップしそうだけど……。
「あの、私はこれからどうしたらいいんでしょうか。修理屋、になれたりしますか?」
「それは難しいわね」
あ、そうなんだ。
「セツさんは損耗率を感じられるわけじゃないでしょう?」
「はい」
壊れているのは
「魔導具師と言ってもピンキリなのよ。不発弾の選別ができるというのは聞いたことはないけれど、損耗率がわかるのでなければ修理屋にはなれないわ」
「そうですか」
「それで、ここからは提案なのだけれど――」
ヨルダさんは言いにくそうに言葉を切った。
「セツさんさえよければ、このままここで仕分けの仕事を続けて欲しいの。不発弾の選別をしてくれたら助かるわ。もちろん報酬は増やします」
渡りに船だ。仕事がもらえるなら喜んでやる。しかもお給料が増えるというならやるしかない。
ううん。駄目だ。ちゃんと話を聞かなくちゃ。また失敗しちゃう。
私は即答しそうになったけど、思いとどまった。
「どのくらいもらえるんでしょうか」
生活費がマイナスになっちゃうなら、他の仕事を紹介してもらった方がいい。もう少しで貢献度が目標に達して、また仕事の紹介をしてもらえるようになるはずなのだ。
「一日当たり、まずは銀貨六十枚でどうかしら」
「え!?」
そんなにもらえるの!?
一日働くだけで宿代二日分になる。
「ギルドだとこれが精一杯なの。他の所に行けば、もっと高給だと思うのだけど……」
もっともらえるの? 不発弾を見分けるだけで?
「不発弾があると冒険者の命に関わるわ。今までは一定の不発弾は仕方ないって諦めるしかなかったけれど、ギルドとしては、冒険者の安全を守りたいの。負傷率が減れば、クエストをもっとやってもらえるし、アイテムも買ってもらえる。結果的にギルドの発展に繋がるのよ」
なるほど。
大ピンチの時、投げた
私も、不発でさえなければと思ったのだ。
「条件は変わらないんでしょうか」
「出来高制じゃなくて日給になるから、時間はギルドの職員と同じで、基本的に残業はなし。週に一度休みを取ってくれていいわ」
悪くない条件だ。
一定の収入が保証されているというのはありがたい。
「もしも、私が間違えたらどうなりますか」
「不発弾を
一〇〇パーセントの保証をしないのなら、ミスの責任も問われないだろう。
「わかりました。やります」
「本当にいいの? さっきも言った通り、他の所――商業ギルドや魔導具屋に行けば、もっと報酬は高いと思うわよ」
「そうかもしれないですけど、私はここで働きたいです」
このギルドとリーシェさんは、私が信頼できる唯一の場所と人だ。
お給料をたくさんもらう代わりにトラブルになるリスクよりも、信頼できる所で堅実に働いた方がいい。
「じゃあ決まりね。改めてよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
三人で頭を下げあった。
「そうそう、わかっていると思うけど――」
付け加えるようにヨルダさんに言われた言葉に、ドキッとする。また何か知らないことがあるのかも、と思った。
「セツさんが不発弾の選別ができることは私たちだけの秘密よ」
「どうしてですか」
「そんな能力があると知られたら危ないでしょう? こっちとしても、セツさんの能力が知れ渡ってスカウトされても困るしね」
危ないんだ。
だからデルトンさんが送り迎えしてくれたの?
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