第95話『やめさせてもらうわ 3』
芸人を目指していた頃、心のどこかで感じていたことを打ち明けた銀杏。
銀杏「相方が私じゃなきゃ、雨鐘は芸人として、それこそ……上に行けた思うで。」
雨鐘「……そうかもねぇ。」
銀杏「そうかもねぇ、ちゃうわ!」
雨鐘「あはは」
銀杏「……で、ほんまに辞めるん?」
雨鐘「辞めたいで。もうずっと考えとったし。」
銀杏「なんで相談してくれへんかってん。」
雨鐘「……銀杏も、芸人を目指す私たちに対してそんなふうに思うとったとか、言うたことあらへんやん。」
銀杏「……たしかにねぇ。意外と言われへんもんなんやんな。姉妹やけど。」
雨鐘「……姉妹だから、双子だから、ちゃうかな。」
銀杏「……私は、雨鐘に辞めてほしないで。だって、雨鐘とずっとふたりで居るのが、私の人生の目標やし。雨鐘と一緒に居たいから、漫才もコントも頑張った。アイドルも、最初は雨鐘とふたりならやりたいって思うとった。今もそれは変わらへん。せやけど、私は正直ね、多分、雨鐘の言う通り、芸人よりアイドルが向いてるんや思う。歌とダンスやってるとき、素直に楽しいなって思うで。せやけどそれはね、あくまでも、雨鐘と一緒やから。雨鐘と出来へんなら、私も辞める。」
雨鐘「……それはちゃうやん。」
銀杏「違わへんで。」
雨鐘「……辞めて、どないすんの。」
銀杏「こっちが聞きたい。」
雨鐘「っ……私は……芸人の養成所を受けるで。やっぱ芸人やりたいし。」
銀杏「……ラフツイ、まぁまぁ上手くいってるやん。エイチフェス2021に出るんやで?」
雨鐘「出て、その後は?何にも分からへん。何にも見えへん。……いや、銀杏とのレベルの差がどんどん開いていくのだけは、見えるよ。」
銀杏「同じユニットなんやから、私と雨鐘で比べる必要あらへんやん……!」
雨鐘「ユニット内の足並みが揃うてへんとか、あかんに決まってるやん!!」
銀杏「あかん……ことないやろ。雨鐘はサボってるわけでも、適当にやってるわけでもあらへん。せやったら、ええやん。」
雨鐘「何がええの……銀杏に迷惑かけてばっかり。」
銀杏「私がいつ、雨鐘が迷惑って言うた?雨鐘とアイドルやれて、ほんまに楽しいで。毎日、幸せやで。雨鐘が居てくれるから。雨鐘が居たらそれでええの。」
雨鐘「……」
銀杏「……ほら、着いたで。家に入ろ?今日の夜は何食べよか。」
ふたりは家の中に入った。
銀杏「お腹空いたやろ?ごはん食べてからまた考えよう。腹が減っては草は生えぬとかなんとか言うやん?」
雨鐘「戦は出来ぬ、ね。」
銀杏「どや?おもろい?」
雨鐘「ううん、全然。」
銀杏「おーーい!」
雨鐘「……」
銀杏「え、無言はやめてや。」
雨鐘「銀杏が妹で良かった。」
銀杏「……い、いやいや!まだなんも解決してへんから!」
雨鐘「せやな。ごめんごめん。」
銀杏「……今日は、ピザでも取ろか。」
雨鐘「うん。」
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