第46話『アルカンインスタ大作戦 5』

 涙をこぼしながら、明結あゆが話し始めた。


明結「……中学1年生の時、クラスで学級委員長を務めてた。一番最初の係決めでは、誰が誰が学級委員に向いてるか分からなかったから、成績が上位だった私と、もう1人、男子が委員になった。委員長とか、したいタイプで、小学校の時も児童会役員だったから、嬉しかった。張り切ってやってたの。行事のたびに、ここはこうしたらいい、もっとこうするべき、こうあるべき、ここはこうがいいと思う……たくさん言った。でも、小学生とはわけが違ったの。私の言うことを聞いてくれる人はいなくなって、気付いたら私は、ひとりぼっちだった。靴箱に、ウザ委員長って書かれた紙を毎日入れられた。違う字の時もあった。みんなにそう思われてたってことだよ。悲しかった。自信が無くなった。もう、何も、言いたくなくなった」


天音あまねが明結の涙を拭う。


明結「っ……なのにみんなは、アルカンのみんなは、私の言ってること、聞きたいとか、分かりたいとか、すごいとか……バカじゃないの……バカ……!!」


咲希さきが明結を抱きしめた。


咲希「バカとか言わないでよ。嬉しいんでしょ?私たちはさぁ、明結のこと好きなんだもん。ね?みんな。」


洸夏こうか「うん。真面目なところ、大好き!」


奏那そな「みんなのこと見てくれるところも。」


瑚橙こと「挨拶を一番に返してくれる。」


あい「分からないフリとか、優しく教えてくれる……!」


天音「私のくだらない話も、頷いて聞いてくれる!」


明結「……っ……う……」


咲希が明結から離れる。


洸夏「じゃあ……明結ちゃんはさ、なんでアイドルになったの?」


明結「……中学生活、ひとりぼっちのとき、偶然立ち寄ったCDショップで見つけたアイドルが、私の希望だった。だから、憧れて……」


奏那「そうなんだ。」


明結「……偉そうに言っちゃうの、癖なんだ……。やめたい。みんなに……嫌われるの、怖い。」


奏那「嫌わないよ!」


洸夏「うん、嫌わない。むしろどんどん言ってほしい!」


明結「……ほんとに、いいの?」


瑚橙「いいよ。明結ちゃんのアドバイス、もっとたくさん聞きたい。」


明結「……」


咲希「自信持って。多分、この中で一番、アイドルのこと分かってる。アイドルが人に与える幸福が何たるかを、一番知ってる。」


明結「……ねぇ、じゃあみんなは、なんでアイドルになったの?私だけ言うの、なんか恥ずかしいし……」


藍「私は、引っ込み思案な自分を変えたくて。いつまでも人の後ろに隠れてちゃダメだって思ったの。」


明結「……かっこいい。すごく、かっこいいね。」


天音「私は、2次元アイドルさんに憧れたから。藍ちゃんみたいにかっこよくないけど。」


明結「ううん。素敵な理由だよ。」

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