第40話『もういいかい 6』

 ボナンサ風之江プラザ開店記念イベント翌日。スマイリープロダクションにはメールや電話が殺到した。うちの番組でJoyfulenceジョイフルエンスを!うちの雑誌でJoyfulenceを!うちのラジオでJoyfulenceを!うちのライブでJoyfulenceを!


「おはようございます。」


Joyfulenceは今日もレッスンだ。


凛果りんか「おはようございます!」


「昨夜はよく眠れましたか?」


千翼ちひろ「うん!ホッとしてぐっすりだよ!」


桃莉とうり「マネージャー、エゴサした?」


「えごさ……?は、してませんが……」


奈々なな「私たち、すごく話題なんですよ!」


「はい。存じておりますよ。」


凛果「たくさん仕事が来るかなぁ!」


「はい。たくさん来ていますよ。」


桃莉「えっ、もう!?」


「美味しそうなものは無くならないうちに早めに買っておきたいものですからね。」


千翼「無くなるって、何が?」


「スケジュールですよ。昨日の今日なら、まだ空いているスケジュールも多いでしょう、と、仕事の依頼が殺到しています。」


凛果「……どのくらい殺到?」


「そうですね……1週間のうちに、学校より仕事が多くなる日も出てきてしまうかもしれないくらいには……」


桃莉「……えっ、やば。」


「スケジュールをメールでお送りします。」


奈々「ありがとうございます。」


凛果「オプティミズム♪のみんなも、学校より仕事が多い時もあるんですか?」


「そうですね、あります。」


凛果「『高校生』は、できなくなりますか?」


「いえ。あくまでも、まだ皆さんは学生ですので、学業につかえが出ないように、スケジュールは調整します。ですので、オプティミズム♪もそうですが、高校卒業済みの方が、ソロでお仕事をすることも時にはあると思います。」


奈々「ゆりかさん?」


「はい。ですが、スマイリープロダクションはユニットでの仕事を優先する方針です。いえ、スマプロに関わらず、エイチフェスに出演する皆さんは、できるだけユニットで行動できるよう、スケジューリングされています。」


凛果さんがじっと一点を見つめ、不安そうにしている。


「凛果さん、大丈夫ですか。」


凛果「……日常が、ガラッと変わりそうで、なんだかまだ、信じられないんです。ねぇ、3人は気づいてる?私たち、ようやく『アイドル』のために生きていく道に入ったんだよ。私たちがもし抜けたくなっても、多分抜けられないよ。」


桃莉「……?凛果ちゃん、アイドルのために生きていくの、嫌なの?」


凛果「違うよ。すごく嬉しいよ。大好きだよ。だから……嫌いになるのが怖い。『好き』のままで、いられるかな。」

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