106話 生き地獄の耳揉みタイム
琴ちゃんに耳かきされて、気持ちよさのあまりぐっすり眠りこけてた私。そんな私が目覚めたら……琴ちゃんの膝枕という、至高の枕で寝かされていました。
…………いや、なんで!?
「そ、そもそも私……リクライニングで寝てたハズでは!?い、いつの間に……」
自分から移動した覚えは当然無い。となると、必然寝ていた私を琴ちゃんがベッドに動かしてくれたって事になるけど……
…………待てよ?寝ていた私を、琴ちゃんがベッドに……?
「…………ッ!?」
バッと思わず身を起こし、ある事を確認する私。ま、まさか……
「服は……あ、良かったちゃんと着てる……」
寝ていた間に責任を取らされる(いやこの場合は責任を取って貰うが正しいか?)事案があったのではと一瞬焦った私だけれど。服の乱れとかは特にない模様。よ、良かった……私てっきり琴ちゃんのお父さんお母さんに土下座しなきゃいけない案件かと……
そんな飛び起きた私を、琴ちゃんは優しく寝かせつつ。頬を膨らませてこう告げる。
「むー。その反応は何かなお姉ちゃん。まさか私が寝ているお姉ちゃんの服を剥ぎ取ったり、お姉ちゃんの寝込みを襲うような女だと思ったの?」
「そ、そうだよねゴメン。琴ちゃんがそんな事するはず無——」
「(ボソッ)まあ、襲うけどね。実際」
「琴ちゃん?」
今琴ちゃんボソッと何て言った……?
「けど今日はまだ私からはお姉ちゃんに手を出したりはしてないよ。お姉ちゃんの快眠を邪魔するのも申し訳ないし。ただリクライニングソファからベッドに移動して貰っただけ。ゆっくり眠るならベッドの上の方が良いもんね」
「あ、ああうんありがと……」
今日はまだ、という琴ちゃんの発言に若干もの申したい気持ちがあるけれど。とりあえず今はスルーするとして。それよりももっと聞かなきゃいけない大事な事が私にはある。
「それで……その。ベッドに寝かせてくれた事はありがたいんだけどさ琴ちゃん」
「うん」
「…………もう一度聞くよ。どうして私、琴ちゃんに膝枕されてるのかな……?」
ただ寝かせるだけなら膝枕する必要は全くないはず。それなのに何故琴ちゃんは膝枕という極上の枕を使わせてくれているんだ……?
私のそんな問いかけに。琴ちゃんはにこっと笑ってこう告げる。
「だって」
「だって?」
「して欲しかったんでしょ?膝枕」
「……え」
「最初に耳かきするって私が言った時、お姉ちゃん物欲しそうな目で私の太ももチラチラ見てたし」
「…………ナンノコトカナー」
だらだらと冷や汗を垂れ流して琴ちゃんから目線を逸らす私。ば、バレてた……だと?
「隠さなくて良いのに。むっちりした太もも、好きなんでしょ?お姉ちゃんにそういう目で見られると私とってもゾクゾクして嬉しくなっちゃうし。私の太ももは……と言うか、私の身体も心もぜーんぶお姉ちゃんに捧げているわけだし。お姉ちゃんの好きにして良いんだよ」
甘ったるい声色を使い、耳かきですっきりした耳元でそう私に囁く琴ちゃん。ほんっと……いつの間にこの子ったらこんな色気たっぷりに成長したのやら……ッ!
「それとね、もう一つ膝枕する理由があってね」
「ま、まだ何かあるの……?」
「お姉ちゃんが寝ちゃったから中断したんだけどね。まだ耳かきの途中だったから。お姉ちゃんが起きてから続き、してあげようって思って」
「……耳かきの続き?」
その琴ちゃんの一言に疑問を抱く私。あれ?両耳とも琴ちゃんの手によってすでに耳かきは終わっているような……?それにそもそも膝枕したまま耳かきするのは良くないってのは、他でもない琴ちゃんが言ってきたハズじゃ……
そんな疑問を抱く私に。琴ちゃんはその白くて細長い指を伸ばしてきて——
「まだ途中だよ。最後の仕上げが残ってるもん」
「ひ、ぁ……!?」
そう言って、琴ちゃんは私の耳に触れ。何故かゆっくり揉み始めたではないか。
「ねえお姉ちゃん。知ってる?」
「にゃ、にゃにを……!?」
「お耳にはねたくさんツボがあるんだよ」
親指と人差し指で耳を摘まみ、こねこねクリクリと柔らかくじっくりと。優しく耳をほぐしていく琴ちゃん。
「だから耳かきの時に一緒にこうして耳も一緒にマッサージしてあげると、もっともっと気持ちよくなれるんだって。耳かきの時は膝枕出来なかったけど……耳のマッサージの時なら膝枕も出来るよね。お姉ちゃんのご所望の膝枕も出来て一緒にお耳のマッサージも出来るなんて一石二鳥でしょ?だから——」
琴ちゃんが楽しそうに何か話しているけれど、生憎今の私にはその話をまともに聞く余裕というものがなかった。
「(これ……だ、ダメだ……)」
摘ままれて、摘まんだままぐるぐる回されて、上下左右に引っ張られる。手のひらで包まれて折り曲げられてギュッとイタ気持ちよく押し込まれて……ただそれだけのはずなのに。琴ちゃんの指先があまりに的確に私の耳を刺激していくから……それも私のとびっきりの弱点である耳を刺激していくから……
あまりに気持ちよすぎて背筋がゾクゾクする……
「(そ、それに……膝枕が、想像以上に極上すぎて……)」
耳かきが始まる前から覚悟していた事とは言え、想像していた何億倍も……琴ちゃんの膝枕が良すぎる。いつの間にか大きくなっていた琴ちゃんの、私好みのパーフェクトボディ。ムチムチ太ももは柔らかいし、甘い香りが漂ってくるし、ふにふにの肌から感じる温もりは心地良すぎて……
「(だ、だめだ……これは、虜になっちゃう……)」
これ以上この素敵枕に触れ続けていたら、頭がどうにかなっちゃいそうだ。せめて少しでも単純接触を避けようと、私はこっそり頭を浮かせ——
「こーら、小絃お姉ちゃん。頭ちょっと浮かせているでしょ」
「へ……?」
「ダメだよ、そのままの体勢じゃ辛いでしょ。ほら、ちゃんと頭を乗せてね」
「ふぁ……!?」
——ようとしたところで。琴ちゃんは私の頭をぐいっと自分の太ももに沈み込ませる。お陰でさっきよりもより深く琴ちゃんの柔らかさと琴ちゃんの香りに包まれて。
おまけに勢い余ったせいなのか。私の側頭部は、太もも以上に柔らかいたわわに実った琴ちゃんのお胸がむにゅう……と乗っかかってきたからさあ大変。片や太ももに、片やお胸に。なんなのこの幸せサンドイッチは……!?ドエロい……じゃない、ドえらい事になっちまった……!
「ふふ……お姉ちゃんのお耳、真っ赤っかだ。そうそう。自律神経の乱れとかに効くツボとかあってさ。そこを刺激して耳の血行を良くすると、全身の血行も良くなるんだって。ちゃんと効いてきているみたいで何よりだよ」
すまない琴ちゃん。私の耳が赤いのは、耳つぼマッサージだけが原因じゃないと思うんだ……
理想の胸と太ももに挟まれて、テクニシャンな琴ちゃんの指先に踊らされて。私はすでにいっぱいいっぱいになっていた。幸か不幸か琴ちゃんのダイナマイツな胸に隠されて、私の今の顔は琴ちゃんには見えていないはず。けれど……断言していい。今私……すっごいだらしのない顔をしているのが、鏡を見なくてもわかる。
「(だ、だから嫌だったんだ……琴ちゃんにこういう事されるの……)」
こうなる事はわかりきっていたけれど。それでもまさかここまでヤバいとは……なんとか体裁を保とうとするけれど、一体どこで覚えたのか耳のツボを的確に、適切な力加減で琴ちゃんによわよわな耳を刺激されるだけでふにゃふにゃに……クラゲみたいになっちゃう私。
「(こ、こんな顔……琴ちゃんに見せるわけには……)」
「よーし、それじゃ次は反対側もしよっか。お姉ちゃん、一度起きて逆のお耳を見せて」
「ひぃ!?」
見せるわけには、と思った矢先に琴ちゃんから発せられる死刑宣言。ま、ままま……待って……!?ま、マジでこんなだらしない顔見せらんないし琴ちゃんにだけは見せたくないんだけど……!?
「んー?どうしたのかなお姉ちゃん?そのままじゃお耳のマッサージが出来ないよ」
「あ、あの……あのっ!も、もう十分っていうか!こ、これ以上琴ちゃんにしてもらうのはちょっと申し訳ないっていうか……!」
「だーかーらー。遠慮しちゃダメだよお姉ちゃん。片っぽだけ残しちゃうのは気持ち悪いでしょ?ほら、起きてお姉ちゃん。おーきーてー」
このままじゃこのだらけきってトロトロに溶かされた顔を琴ちゃんに見られてしまう。見られたら……琴ちゃんの評価が『お姉ちゃん』から『ただの不審者で変質者』にランクダウンは必須だろう。そんなのはマジで勘弁だ……!ど、どうにかして顔を見られないようにしなきゃ……!
「(こ、こうなったら……!)」
私は咄嗟にごろんと琴ちゃんの膝枕の上で身体を転がして半回転。そしてそのまま琴ちゃんのお腹に顔を埋める。よ、よし上手くいった……!これで琴ちゃんにこの顔を見せなくて済んだ……!
そう勝利(?)を確信した私だったんだけど。次の瞬間自分のやったこの行為が……どれだけおろかだったのか。思い知らされる事になる。
「…………白?」
窮地を脱したと思いホッと胸を撫で下ろした私の眼前は。見慣れぬ白一色に染まっていた。何だろうこれは?と指でふにふに突っつくと、
「ぁん……っ♡お、お姉ちゃんったら……意外にダイタンなんだね」
頭上から琴ちゃんのなんとも艶めかしい声が聞こえてきた。…………ちょっと、待って。これって……もしかしなくても……
冷静に考えたら。というか冷静に考えなくてもだ。今日の琴ちゃんは太ももが見えるくらいミニのスカートを履いていて。そんな状態で私は膝枕をされていたんだ。膝枕されたままスカートをめくり上げるように身体を回転させたなら……どうなるのかは容易に想像出来るだろう。
「…………つまり、これ……琴ちゃんの……パン——」
目の前にあるものの正体と、自分が何をやらかしたのか気づいてしまった瞬間。ただでさえ耳のマッサージで良くなっていた血の流れが更に加速する。
鼻血を放出しなかった自分を、褒めてあげたかった。そうじゃなかったらこの純白のレースを汚らしい赤に染め上げてしまっていたところだったから。
『あれ?お姉ちゃん?お姉ちゃーん?また寝ちゃった?えへへ……そんなに気持ちよかったんだ。反対側もちゃんと気持ちよくしてあげとくから、ゆっくり寝てて良いからねー』
頭に昇りに昇った血が脳を沸騰させ。謝罪の一言すら発することが出来ずにキャパオーバーを起こして薄れてゆく意識の中。琴ちゃんの優しい声だけが木霊する。
『ホントは、耳かきと耳つぼマッサージが終わった後で……もう一個だけやりたい事があったけど……それは後でしてあげるからね。楽しみにしててねお姉ちゃん……♪』
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