第52話 ダンジョンのボスの先

 

 ビッグラビットだったポリゴンが完全に消えた。


 ダンジョンボスであるビッグラビットを倒したことで、ボス討伐報酬の宝箱が出現した。しかし、いつもとは異なり、外へ出るための転移陣は出て来ていない。


 おかしい、そう思いながらも宝箱の中身を確認する。

 宝箱の中には一応魔石が入っていた。ただ、数は3個で他にビッグラビットの素材がいくつか入っているだけだったけど。

 中身を取ったことで宝箱が消えていく。宝箱が消えたことで何か変化がある可能性があるので周囲を確認する。


「宝箱の中身を取っても転移陣は出て来ないのか。これ、どうやって外に出るんだ?」

「出られ…ないの」

「いや、うーん」


 俺の言葉に反応して、ぷらてあが心配そうに声を掛けて来た。

 しかし、周囲を見渡すも何か変わった部分は見当たらない。来た道を戻ったところで、次の階層に進むための転移陣は一方通行なので戻ることは出来ない。

 もしかしたら、入ってきた所に転移陣が出ている可能性もあるので、周囲を一通り確認して何の進展もなければ確認しに行こう。


「どうしたものか」

「なんか穴が開いた……です」

「ん?」


 何かに気付いたのかシュラが俺の装備している防具の端を引っ張り、それに気づいた俺はシュラが指差している方を確認した。するとそこには今までなかった先に進むための穴らしきものが開いていた。


「ふむ。よく見つけたな、偉いぞシュラ」


 さっき確認した時は無かった気がしたのだけど、とりあえず見つけたシュラをねぎらって頭を撫でておく。


「やったです!」


 頭を撫でられて嬉しそうにしているシュラを見てほっこりする。


 しかし、先ほどまでなかったと記憶している以上、おそらくあの穴は宝箱を開けた後に出現したのは確かだろう。その後に俺も確認していたのだけど気付かなかったのはタイミングが悪かっただけか? 

 それにシュラが、穴が開いたと言ったのでちょうど見ている時に変化したのかもしれないな。それに一気に穴が開いたのなら気付きやすいと思うが、ゆっくり穴が開いていったとすればチラッと見た程度では気付きにくい気もするし。


 先に進む場所が出て来た以上、そこに進むしかないだろう。


『ふふふ。よくぞ我が僕を打ち倒した挑戦者たちよ! そなたらに我に会う権利を与えるのじゃ! さあ、目の前にある穴の先へ進み、こちらに来るが良いぞ!』


 先に進もうとしたら何処からともなく変な声が聞こえて来る。


 アナウンス……ではないな。アナウンス用のログに残っていない。という事は、シュラたちにも聞こえて……いたようだな。シュラが声の主を探して周囲を窺い、ぷらてあは首を傾げ、朱鞠は……無反応に見えるからよくわからないな。


 というか、呼ばれなくても行くつもりだったんだが、と反論というかつっこみたくなったが、声に出しても伝わる気がしないので、そのもやもやをため息として吐きだす。


 誰の声だとか、何処から聞こえてきているのか気になるが、何と言うか、こんな感じで誘って来る場合って、多いとは言わないけど罠の時もあるんだよなぁ。まあ、今回は行くという選択肢しかないから、行くしかないんだけどさ。


 罠の可能性も考え、十分に警戒して進んでいく。


 先に進むために開いたと思われる穴はそれほど大きくなかった。上部はアーチ状になっているが高さは2.5メートルくらいで、横は1メートルといったところ。


 穴の中は普通に通路になっていた。直ぐ向こうに空間が広がっているように見えるので、通路の長さは10メートルもないだろう。


 そして通路が終わり、先の空間に到着。そこはダンジョンボスがいた場所とは異なり、とても小さな空間だった。変わらない所と言えば、この空間に何一つ物がないところだろう。まあ、真ん中に存在している小さい者を除けばだけど。


『よく来たのじゃ! 我が名はアンゴーラ。このダンジョンのダンジョンマスターであるぞ!』


 そこには小さな毛の長いウサギが堂々と鎮座していた。



 ≪ミヨのステータスが更新されました≫



―――――

ミヨのステータスを確認したい場合は、別話『ミヨのステータス 一覧』に移動をお願いします。

※確認しなくても話の内容には影響しません。


『ミヨのステータス 一覧』へのリンク:https://kakuyomu.jp/works/16816452220059104663/episodes/16816452221114863860

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