第12話 居候のニケ
ボクは魔野菜収穫クエストが終わった後、冒険者ギルドの受付で今回のクエストの報酬を受け取った。
ゴンサクさんからボクたちに支払われた報酬は一人500MP。
これにボクが自分で討伐した
テミス君が討伐した
締めて822MPが今日のボクの現金収入だった。
これにゴンサクさんが
あとで知ったんだけど、民間からクエストの依頼を受けて
実際、今回はゴンサクさんの農地で討伐して収穫した魔野菜なので、本来はゴンサクさんの取り分なんだけど、気前よく分けてくれるあたりやっぱりゴンサクさんは良い人なんだなぁーとつくづく思った。
とは言え、これで「銀の乙女亭」に宿泊費の500MPを支払ったら手元に残るのは322MPしかない。
食事とかも含め、普段の生活で必要なものや装備が壊れて買い替えるとかをしていたらほとんど手元には残らないだろう。
なんとか安く暮らせる環境を手に入れなければ……
アイシャにもちょっと相談してみたけど、冒険者ギルドが提供している冒険者向けの寮はやっぱり空きが無いらしい。
この前の
ほんと、この
ボクに何のうらみがあるってんだ!
……と、荒ぶったって仕方がないのでここは一つケレブリエルさんに一度、相談してみようと思った。
「銀の乙女亭」に着くと案の定、受付にケレブリエルさんが居た。
昨日一昨日とで見る限り、だいたいいつもこの時間はケレブリエルさんは受付にいるようだった。
「あの、これ今日のクエストで農家さんからもらった
そう、
ボクはパパから教えてもらって知っている。
何かお願い事がある時は『贈り物作戦』が有効であるということを……
パパがママにお願いをする時にいつも使っていた作戦だ。
そして受け取ってしまった時点でもう相手のことは
ボクはちょっと申し訳なさそうにもじもじしながら、上目遣いでケレブリエルさんにお願いする。
「あの、ボク、今住むところが無くて…… 普段は冒険者ギルドが運営する冒険者用の寮があるらしいんですけど、今はこの前の
ボクは目をうるうるさせてもう一度、上目遣いでケレブリエルさんを見つめる。
そう、まるでチワワのように!
「あの、もちろん、お代はお支払いさせていただきます! でもまだ駆け出しの木等級冒険者なので少しお代を――――っ?」
ボクが途中まで言いかけたところで、ケレブリエルさんが急に笑い出す。
「もーっ! ニケちゃん! そんなことだと思っていたわ! 良いわよ。安くしてあげる。実は言うとね? 今朝、あなたたちが出発する前にバロラちゃんからもニケちゃんのことをよろしく頼みますってお願いされていたのよ。だから娘の部屋はもう掃除済みで宿の備品も隣の別の倉庫に移してあるわ。安心して使って良いわよ!」
と、どうやらすでにケレブリエルさんには全てを見透かされていたみたいだった。
ボクは自分が姑息な手段に訴えようとしていたことが恥ずかしくなって、少し赤面してしまう……
っていうか、バロラはそんなことまで気にかけてくれていたの?
あの人、ボクに大切な迷宮遺物の指輪まで譲ってくれたし、本当にすごく良い人なのかもしれない……
事前に部屋を掃除までしてくれていたケレブリエルさんに申し訳なくなり、僕は「安くお貸しいただける代わりにクエストから戻ってきたら宿のお仕事もお手伝いさせていただきます!」と申し出た。
ケレブリエルさんは「そんなこと気にしなくて良いのよ?」と言ってくれたけど、やっぱりここはご厚意に甘えるだけじゃなく、ちゃんとしないと自分がダメな人間になる気がしたのでお手伝いをさせてもらえるように改めてお願いをした。
「とりあえず今日はクエストで疲れたでしょうから、お手伝いは大丈夫だから部屋でしっかり休みなさい!」
とケレブリエルさんが言ってくれたので、お手伝いは明日からさせてもらうことにして、ボクはいったんケレブリエルさんの娘さんが使っていた屋根裏の部屋へと行った。
部屋はちゃんと片付いていて、綺麗にお掃除もされていた。
お布団も新しいものになってる気がする。
枕からはカモミールだろうか?
爽やかな香りがして安眠できそうだった。
バロラもそうだけどケレブリエルさんも本当に良い人で、ボクはこの世界に突然取り込まれる形にはなったけど、出会った人たちには恵まれているなと彼女たちに感謝をした。
バロラはまるで本当にお姉ちゃんのようだった。
うちの
ボクが何か問題を抱えていてもそれを代わりに解決してあげるとかではなくて、「ちゃんと見守っててあげるから自分でやってみなさい?」と自分の力で乗り越えられるように促してくれる。
たぶん昨日、「銀の乙女亭」の宿代を払ってくれなかったのも自分の力で何とかできるようにと配慮してくれていたんだと思う。
だって、
それを気前よく譲ってくれるバロラがたった500MPの宿泊費をケチりたかったはずがない。
もしケレブリエルさんが林檎を買い取ってくれなかったとしても、その時はきっとバロラがなんとかしてくれたんだろうと思う。
まぁ、たまに変なテンションになって鼻息荒くなったりするところはうちの
ボクは「銀の乙女亭」の魔素が豊富なお風呂で今日消費したMPをしっかり回復した後、食堂に行って夕食をいただいた。
今日のメニューにはボクが取ってきた
魔素が豊富な
ねっとりとしてなめらかな舌触り…… 芋本来の甘味、コク、旨味…… 食べた後ふわっと大地の香りが鼻から抜けていくような豊かな香りも素晴らしかった。
ケレブリエルさんも
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