第6話 バロラ先生の魔法基礎講座 ~実践編~
バロラに「実践をやってみましょう!」と言われ、ボクはさっきバロラに見せてもらった風属性の初級攻撃魔術『
「いと
「ちょっと待ちなさい、ニケ」
『
「いったん『
バロラはそう言うと、ボクが何属性が得意かを確認する方法を教えてくれる。
「ニケ、とりあえず手を前にかざしてみて。それで手から『なにか出ろ~、なにか出ろ~』って念じるの。さっきみたいに見よう見まねでも術式みたいなものは組まないでね? 変なことをするとその術式に応じたものが出てしまうかもしれないから。あくまで何もせずに『なにか出ろ~、なにか出ろ~』って念じてみて」
バロラに言われ、ボクは右手を前にかざして念じてみる。
(なにか出ろ~、なにか出ろ~、なにか出ろ~、なにか出ろ~、なにか出ろ~…… あれ? 何も出ないな~? 何も出ないぞ~、とにかく出ろ~、なんでも良いぞ~、いい加減にしろ~、やってられるか――)
30秒くらい念じ続けても何も出ず、「やってられるか!」と諦めかけた瞬間、指先から暗緑色の塊が「ぽふっ」と出た。
「あら? ニケ、それは『
そういうと、バロラは闇属性について説明してくれる。
「普通、単純属性魔素の火、風、水、土の四元素の場合、どの属性がどれに強くてどれに弱いといった相性みたいなものがあるの。だから例えば火属性が得意な人の場合、弱点になる土属性が得意な相手には弱くて、火属性が弱点の風属性が相手なら強いわ。でも闇属性はどの属性に対して強く、どの属性に対して弱いという相性が存在しないわ。一説によれば『火、風、水、土の四元素を全て混ぜて創られた合成属性なんじゃないか?』とも言われてるけどよく分かってないのよ。闇属性の性質は【混沌と力】。あらゆる属性が混じることであらゆる性質が有るとも言えるし、無いとも言える【混沌】とした状態だと考えられていて、それが示す効力は純粋な【力】とされているわ。とりあえず闇属性が使えるならどんな敵が相手でも不利にはならないから、それさえ使いこなせれば下級冒険者くらいならやっていけるわよ」
どうやら、ボクが得意な属性は闇属性で、それはちょっと珍しいようだ。
バロラは「とりあえず『
短剣を鞘から抜き、前回同様、トレントになりかけの樹の方へと向ける。
バロラは短剣で空中に正三角形とその上に逆正三角形を重ねて六芒星を描きつつ、呪文を詠唱する。
「混沌よ、力の根源よ、我が眼前に弾となりて、敵を穿て!
そう唱えると先ほどボクの指から出たものより何倍も大きい暗緑色の力の塊が、バロラの目の前で「弾」のような形状となる…… 形成された魔弾は樹の方へと高速で放たれた。
高密度の力の塊である魔弾は見事、樹に命中し、その幹が「バギっ!」と弾け飛んだ。
「とりあえずこの魔術のやり方を覚えてもらうわ!」
バロラは『鑑定』で近くにあるトレントになりかけの樹を探し、ボクにターゲットを指定してくれた。
ボクはバロラに見せてもらった『
まずバロラから譲ってもらった魔法の短剣アゾートで空中に六芒星を描く、そして呪文を詠唱する。
「混沌よ……、力の根源よ……、我が眼前に弾となりて……、敵を穿て!
そうすると先ほど指先から出たものとは違い、もっと形がハッキリしたものがボクの眼の前に現れる。
それは次第に弾のような形になり、ターゲットの方向――には向かわず、隣の樹の側に着弾する。
どうやら、狙いがうまく付けられていなかったようだ。
「ねえ、ニケ。『
バロラに脅されてボクの首筋を冷や汗が流れる……
いや、お金が無いから冒険者になるんだからね?
冒険者になって借金作っていたら意味無いから!
ボクは改めて気持ちを入れ替えて術式を組む。
六芒星を短剣で描いた後、短剣が向いている先の樹に意識を集中する。
「混沌よ、力の根源よ、我が眼前に弾となりて、敵を穿て!
今度はちゃんと樹の方に意識を集中していたので、ちゃんとそっちの方向に弾が飛んでいく。
ただ弾の形成に意識があまり向いていなかったからか、弾は先ほどよりも小さく形も不安定なものになった。
それでもなんとか樹に当てることができ、ボクの『
弾けたところで幹が折れ、トレントもどきはドサリっと倒れ、無事一体倒すことができた。
ふぅーっ、なんとか成功……かな?
ボクは額に浮かんでいた汗を右腕で拭った。
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