第109話 感動の共有〜指輪の交換〜
桜柄のきれいな布にそっと置かれたソレは、日をうけてキラキラと輝いていた。
いつもつけていても邪魔にならない程度の小さな宝石のついたそれを、巫女さんが差し出してくれる。
「では、指輪の交換と行きましょう。」
神主さんが微笑みを絶やさずに告げる。
指輪の交換は教会とかでやる結婚式のものだと思っていたけど、そんなことはなく。普通に神前挙式でもやるらしい。
元々結婚と一番遠い所にいたから、初めての挙式でビックリすることや、へぇーと感心することが多い。
まぁ、初めてじゃない挙式を挙げることにならぬように善処しなければならないんだけどね。
「で、では行きます……」
俺は宝石を触るように……って実際宝石なんだけど。そのくらい慎重に指輪を取って、右手でしっかりと持ち直す。
左手でさくやさんの手を取ると、彼女がはめやすいように指を伸ばしてくれた。
その小さな気遣いに思わず頬が緩む。
緊張してどんどんと速くなっていく鼓動を落ち着かせ、ゆっくりと慎重に。指輪をさくやさんの左手の薬指にはめる。
よ、良かったぁ。
上手くハマって、ホッと胸をなでおろす。
サイズも勿論ピッタリで、控えめな宝石がとても彼女に似合っていた。
「私の番ですね……!」
指輪のハマった自分の左手を一瞬だけ、愛おしそうに眺めたあと、さくやさんが緊張気味につぶやいて台座から指輪を取る。
俺が左手を出すと、彼女がそーっと慎重に指輪をはめてくれた。
こちらもサイズはピッタリ。
普段からつけるから宝石はないほうが良いかとか、色々とさくやさんと考えた。
結果、やはり宝石はつけたいということになり、つけるならどんな宝石が良いかも話し合って、無難にダイヤモンドとなった。
と言っても、そんな大きなものをつけては邪魔になってしまうので、出っ張らないくらいの小さなものを一つつけただけだが。
「見せてあげてください」
俺が自分の指にハマった指輪を感慨深く見つめていると、神主さんが微笑みながら後ろを手で指した。
何かと振り返れば、お義父様を始めとした皆さまが、ウズウズとした様子でこちらを見ている。
「ふふ、見せてあげましょうか」
同じく振り返ったさくやさんが、口に手を当てて小さく笑って言った。
「そうですね。では、いっせーのーでっ」
俺は頷いて、彼女の手を取り、
「「じゃーん!!」」
見せつけるように、上に掲げた。
「おぉ……」
「うぉぉ!! すっげぇな!!」
「ヒュー!!」
「いよっ!!!」
笑って手を掲げる俺たちを見て、あるお義父様はやるじゃないかと微笑み、ある父さんは純粋に感嘆し。また、ある元後輩と部長さんは冷やかしと祝福を込めて、かけ声をあげた。
「ははは、みんな楽しんでるな」
その様子を見て、俺が笑って感想を述べれば、
「ふふふ、流石ですね」
さくやさんもこちらを見上げて笑ってくれる。
こんな感じで、当事者はもちろん。参加している方々のみんなも楽しみながら、結婚式は進んでいった。
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