第68話 水道があちゃちゃ

「あちゃー、やっちったな」


俺は昼の忙しい時間帯を終えた、おやつ時にカウンターでつぶやく。


どうしたのかと声をかけてくれる人も、お客さんもいない。

何か言っても声が返ってこないのってなんか寂しいよね。


「つめてっ」


俺は自分にまでかかってきた水を見て、これは不味いなと思う。


何に困っているのかというと、一言で言うのならば故障。


別にお高い機材を壊してしまったわけではなく、水道の蛇口が曲がってお水がブッシャーしちゃってるだけ。


幸いなことに勢いはそこまで強くなくて、周りに飛び散りまくったりはしないけど、普通に使いづらいし、たまに冷たい。


「お水の救急隊的なステッカーなかったっけ」


俺は冷蔵庫の前に立つが、あの青色のステッカーは見つからなかった。


水道の故障を直してくれる業者さんといえば、ステッカーなのに。

一度も利用したことないけど、家にステッカーは山ほどあるみたいなのはあるあるだと思う。


最近はあんまり配らなくなったけど。


しかし困ったな。あのステッカーがないとなれば、どこに電話すればいいかわからない。


「ググるか。」


そこは文明の利器のお世話になろうということで、俺はスマートフォンで『水道 修理 

愛媛』と検索した。


こんな適当なのでいいのかと思ったけど、いや出てくる出てくる。ずらーっと大手から地方のものまでたくさん。


こんなに水道修理業者ってあったんだ。

もっと2,3社くらいだと思ってた。


俺はその中から適当に、良さげな会社を選ぶ。


『水道のことならヤドカリへ!』


うん。良さげだな。ヤドカリっていうのが可愛らしいし、この自信有りげな文章が好きだ。


「あのすみません……」


俺は早速電話する。

窓口のお姉さんも優しくて、しっかりと対応してくれた。


30分程度でついて、お金は前後するけど1万前後と。


なかなかに良心的では?

人生で水道が壊れたことは、高校の理科室くらいしかないから分からないけど、感覚的にはお安い感じ。


高校の頃の実験で水出してたら、いきなり蛇口取れて水が放出されて教室中が水浸しになった苦い思い出。


たしか取り付けが甘かったらしいし、俺と同じ班だった田辺たなべくんのせいではないらしい。


よかったな田辺たなべくん。やらかしちまったと焦ってたから。


そんな昔の思い出を懐かしみながら、俺はときおり訪れる冷たさに耐えつつ、水道修理の業者さんを待った。

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