第87話・再編成③

 プールでの測定が終わると、その後は基地の外周を走り、カークやマックスと格闘術のスパーリングを行い、射撃の訓練をした。

 

 三ヶ月のブランクはあれど、レインの勘はみるみるうちに戻り、実戦で使えるレベルに至ったと二人は判断したようだ。


「何で家政婦なんかやってんだか」


 カークがレインに言った。レインは鼻を鳴らしただけだった。


「作戦決行は明日だが」


 マックスが言う。そして続けた。


「お前、何処に泊まるつもりだ?」

「え? 家帰ろうと思ってたけど……」

 

 レインが答えると、カークが言う。


「めんどくせぇだろ、それ。ガルタが寝床用意してるらしくてな。二人じゃ広いから、お前も来いよ」

「旅行に来た、って訳じゃねぇんだから」


 マックスが口を挟む。


「いいじゃないか、なんせベットが二つほど余るんだよ」


 レインは少し考えた後、言う。


「オーケー、そうさせてもらうよ」




 その後、談笑しながら二人の寝床に向かっていたレインであったが、腹が減っていたので、途中で別れて食堂へ向かった。


 メニューが分からなかったので、昼と同じものを頼み、食事を済ませ、プレートを返却口に返す。


「あっ」


 その時、彼の背後から驚いた声がした。レインがプレートを置き、そちらに振り返ると、黄色と青のオッドアイと目が合った。


「よう」


 レインが右手を上げて応じる。


「これから晩飯か?」

「そ。ここの料理おいしいでしょ」


 ナギが後ろ手に回し、軽い様子で言う。どういう訳か、少し楽しそうだ。


「あぁ」


 レインは短く答え、続ける。


「訓練はどうだ?」

「疲れた。もうクタクタ」


 ナギは言い、溜息を付く。ただ、気分まで落ち込んではいない様だった。


「私、ご飯貰って来るね」

「あぁ」

「席、取っといてくれない?」


 そう言われ、レインは周りを見渡す。お世辞にも混んでいるとは言えない。


「必要あるか?」


 レインが言うと、ナギは少し膨れ面になって言った。


「いいから! 取っといてね!」


 それだけ言い、彼女は受け取り口の方へ小走りで駆けて行く。


(なんだありゃ?)


 その背中を見送りながら、適当にレインは席を探し、腰を下ろす。


 彼女が厨房の人にペコリと礼をしてプレートを受け取り、後ろへ振り返るのが見えた。レインは手を上げて場所を示し、ナギが明るい表情でレインの方へやって来る。


 席に着き、プレートを置いた。盛り付けられている料理は、レインの物よりもはるかに多い。


「相変わらずだな」


 レインが言い、ナギが返す。


「相変わらずです」


 彼女は誇らしげに胸を張りながら言い、箸を取って一口食べようとしたところで、思い出したように言った。


「そういえば、何で居るの?」

「あぁ、そうか」


 レインは、自分がここに居る経緯、明日の作戦に参加することを彼女に説明した。

それを聞いた後、ナギの表情が少し暗くなった気がするが、見間違いだろうとレインは気に止めなかった。


「そうなんだ」

「あぁ」

「実はね、私も参加するの」

「らしいな、シェラから聞いた」

「……うん」


 彼女は言い、夕飯を食べ始めた。


 

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