第251話 解放感
俺達がその場から離れ、そこそこ距離を開けるとトゲくん達、更にはリヴァイアサンの口から白い光が溢れだしていた。
よく見ると水中に氷の粒がいくつも生まれその周りに冷気が漏れているのが分かる。
――ザバザバ
リヴァイアサン達が準備を進めていると奥から慌ただしく水の揺れる音が聞こえてきた。
視線の先には女王、それに【1】の姿も。
米粒以下の小ささにしか見えないが、ここまで音が聞こえるというのは異常。
怒気、殺気、そういったものが音だけで伝わってくる。
スピードもかなり早いようで、米粒の大きさから2匹は次第に大きくなり音も大きくなる。
もたもたしてると追いつかれる。
そんな焦燥感がどうしようもなく沸き上がる。
数日間俺の分身が受けてきた暴行、凌辱行為の数々が脳裏を過り、もし今度捕まってしまえばあれは俺自身に向けられる、という事を考えてしまう。
『リヴァイアサン、まだ撃てないんですか? 早くしないと女王と【1】が――』
『そう急くな。ちょうど今準備は整った。それと男がみっともない声で話し掛けてくるな。もっと堂々としておれ。だからといってもうそのシャボンからは出るなよ』
リヴァイアサンはこちらに目を向けた後にシーサーペント達とトゲくんにも視線を配った。
そして全員がこくりと頷くと、リヴァイアサンの目がかっ開く。
「全員放てぇえええええええええええっ!!」
一斉に解き放たれた氷の息は凄まじい勢いで水を凍らせ始めた。
しかもその吐き出す勢いが強すぎるがあまり反動で全員の体が俺達に向かって飛んで来る。
なんだか夏休みに自由研究でペットボトルロケットを飛ばした事を思い出してしまう光景だ。
特にスピードを出して飛んで来るのは以外にも普通のシーサーペント達。
おそらくトゲくんやリヴァイアサンに比べて未熟な為反動に堪えきれないのだろう。
シーサーペント達は直ぐ俺達のいる場所までやってくるとその体で俺達まで一緒に飛ばされる。
この階段通路を自分達で泳いで上らなくてもいいから一部のメロウはちょっと楽しそうにしているようにも見える。
セレネ様も嫌そうな顔はしていないし、完全にアトラクション気分だ。
「それ、最後は我が全員を吹っ飛ばしてやる!」
堪えきれなくなったシーサーペント達が重なるようにしてぶつかり、俺達を運ぶ勢いは次第に強くなった。
そしてトゲくんがぶつかり残りがリヴァイアサンだけとなるとリヴァイアサンはわざと力みを失くしてぶつかってきた。
少女の姿のまま氷の息を吐いているのも面白いが、体が小さいリヴァイアサンが1番ぶつかった時の衝撃が大きいというギャップも面白い。
「光……。外に出るわっ!」
階段の先から小さな光が見えると、セレネ様が大きな声を上げた。
――その数秒後、俺達は久々に水の中から抜け出すと空中に放り出された。
そういえばあんなに監禁されてたのに、慌てすぎて外の光をゆっくり感じれてなかったな。
この解放感、堪らない。
「メア……本当にありがとう」
「……お礼はもういいわ。それより今は着地の仕方を考えた方が良さそうよ」
氷の息が消えた事で勢いがなくなり体が落下してゆく。
あっ、これヤバイな。
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