第245話 知り合い?
「その強さ、波を操るスキル、間違いなくお前は俺達の最大目標っ!」
【1】のシードンは俺を無視して【リヴァイアサン】一直線。
自分が逃げる事なんてさほど大した事ではないと言われたようでイラッとしたが、俺が勝てる相手ではない事は明白。
悔しいがここはメア達の元へ向かうしかない。
「――!? 輝明っ!」
「メアっ!」
仲間を介抱していたメアはこちらをチラリと見ると大きな声で俺の名前を呼んだ。
その瞳には一杯の涙を溜め、今にも決壊しそうだ。
思えば数日女王の部屋に居たんだ。
きっと俺が死んでいるかもしれないと考えたはず。
そんな可能性を含みながらここまで、しかも仲間を引き連れて来てくれた事に感謝しかない。
「絶対生きてるって、無事だって……。でももしかしたらって。怖かったし、不安だったし、……辛かったよ」
「ごめん、心配かけた」
「ううん、私もあの時たすけられなかっ――」
「ごほんっ!いちゃいちゃするのは結構ですけど、それは後にしてもらってもいいかしら?」
メアと向かい合って話していると、セレネ様が割って入ってきた。
まさか集落のトップ自らがここまで来てくれるなんて……
「セレネ様まで……もしかして俺の為に?」
「そうだけど、そんな事より状況の説明をお願い出きるかしら?まずあの高波は何?」
「あれは城にいた【リヴァイアサン】が起こしたものです。直にこのフロアを飲み込んで、俺が逃げられるようにすると」
「リヴァイアサン……。あのプライドだけいっぱしなちびっ子がやりそうな事だわ。でもまさか人間を助ける手助けをするなんて……意外だわ」
セレネ様は顎に手を当てて訝しげな表情を見せた。
この言い方から察するに2人は知り合いなのだろう。
どういった関係なのかは気になるところだが、それは無事ここを出てから聞くことにしよう。
「リヴァイアサンは今力が弱くなっていて、それを取り戻すために俺が外に薬を取りにいくという手はずですが……そもそも【1】と【3】の相手をしているリヴァイアサンに勝ち目があるとは……」
「昔のあの子なら楽勝、とまではいかないけど勝っていたわ。絶対。とにかくあの子が私達をここから逃がしてくれようとしているならそれに乗っかるしかない。メア、怪我人の半分と輝明のシャボンをお願い。もう半分は私がシャボンを張るわ」
「分かりました」
シャボンがあっという間に準備されると俺は急いで怪我人をシャボンに入れ、その都度HPの回復ポーションを飲ませた。
今は痛みで意識が飛んでいるみたいだがしばらくすれば元気に目覚めてくれるだろう。
死人が出なかったのは良かったが、俺の所為で怪我をしたと思うと罪悪感で胸が一杯になる。
「セレネ様! 波がもうすぐそこに!」
「みんなっ! 波に飲まれたら私を目印に全力で泳いで! メロウは水中で唯一縦横無尽しかも最速で泳げる種族! これしきの波に負けるのは恥じだと思いなさい!」
「「はい!」」
セレネ様が鼓舞するとまだ力の残っているメロウ達とメアは気迫に満ちた声で返事をした。
「トゲくん! シーサーペント達の誘導は任せたわ!私達の後ろを守りながら付いてきて!」
「がぁっ!」
「くる! みんな身構えて!」
俺達は目の前に迫る波を目前に身構えた。
……そういえばいつの間にかリヴァイアサン達の姿が見えなくなっている。
リヴァイアサン……。無事、だよな?
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