第244話 津波
遠くに高波は間違いなくこちらに向かって押し寄せてきている。
地震の時点でこの可能性、津波を予想していなかった俺はあまりに無能すぎたかもしれない。
「なんだあの波は……」
だが、不意をつかれたのはシードン達も同じ。
攻撃を仕掛けようとする様子は消え、【3】は呆然と高波を見つめる。
おかげで硬直時間もそろそろ終わるな。
『隠蓑』で隠れても硬直のリスクを負うだけだし、ここはそのまま『瞬脚』でメアと合流するか。
「『瞬脚』」
俺は身体が動く事を確認すると『瞬脚』を使った。
――がし。
「なっ!?」
「いつまでも突っ立っているとでも? あの波じゃ普通のシードンは溺れて死ぬ。だが俺達は他の個体よりも息が続く上に冷静だ。イレギュラーな事態でこそ、自分の生死を判断、最善の択をとる」
移動しようとした俺の足を【3】ががっちりと掴んだ。
こんな風に『瞬脚』を止められたのは初めてだ。
バタつかせても、もう1度『瞬脚』を使ってもピクリともしない。
だったら……
「アルジャン、ルージュ! 俺の足を切断してく――」
――ドスッ
俺はジャマダハルを取り出すと2人に呼び掛けて、足の切断をお願いしようとした。
しんどいお願いばかりで申し訳なく思うが、もうこれしか手は考えられない。
そう思った矢先だった。
俺の足を掴んでいる【3】のシードンの手首を何かが貫通したのだ。
【3】の手首からは血が溢れ、流石に俺の足を握っていられなくなったのか、【3】のシードンの手が開き、足が解放された。
「これほどの威力……。人間ではないな。では一体だれが――」
――ドゥンッ!
さっきまでは聞こえなかった銃声と共に【3】のシードンの足元に弾痕が出来る。
【3】のシードンは攻撃が見えていたのか、それとも野生の感なのか、軽くジャンプすることで見事それを回避したのだ。
『ほう。【3】は武芸に秀でているのか、気配だけで我の攻撃を避けたか』
『テレパシーって事は【リヴァイアサン】ですね』
『【3】程度に手こずっていてはまだまだだな。今からこの波を更に巨体にし、街全体を覆う。急いでメロウと合流し、ここを抜け出す準備をしろ』
『はい。ありがとうございます!』
【3】に敵対するのなんて確かにリヴァイアサンくらいしか思い浮かばなかったが……とんでもない遠距離スキルを持ってるんだな。
「一体どこから……」
俺は移動を開始する前に押し寄せてきているはずの波に目を向けた。
するとその波の上に氷の板1枚で波乗りをを決める女性が……
『こっちを気にしてる暇はないぞ!急げ!』
「は、はい! しゅ、『瞬脚』!」
俺はイカすサーファーに急かされながらメアの元まで駆け出した。
そして、俺は正面から恐ろしい形相で向かって来ていた【1】の姿を確認するのだった。
『やれやれ、やはりそう簡単にはいかせてくれんか……』
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