第236話 盲点
「あははははははっ! ビクビク痙攣して……もう声も出ないのかしら?」
……これ、本当に監視されてんのか?
あれから丸2日。
女王は食事以外の時間はずっと俺の分身と戯れている。
この階層の様子を窺う素振りなんて一向に見られない。
監視のスキルの事は分からないのに女王のどうしようもない性癖ばかり知ってもなぁ。
「ふふふふふふふふ。そろそろ私も疲れてきたわね。ちょっとだけ休憩にしましょうか」
ようやく解放された俺の分身。
俺と意識を共有してるわけじゃないけど、なんだかその顔はもううんざりといった感じだ。
MPのポーションも食料も、切れ掛けているし、このタイミングで何かしらの情報を得られないと本当にまず――
――ビィー、ビィー。
その時女王が人間から奪っていたスマホがベッドの上で振動した。
一番最初にスマホに触れてからというものずっと女王が持って音声の録音などをしていたけど、珍しくスマホは置いてけぼり。
振動の音が耳障りだから、今のうちにサイレントマナーにでも変えておこうか。
「よっと。ん? アプリ通知?」
虚ろな目の分身を横目にスマホを持ち上げると、画面の上部に『ネットモニター通知』という文字が。
監視スキル……それってもしかしてこれか?
俺はアプリを開いた。
すると、このフロアのマップと思われる画像と、雑魚シードンのアイコン、【1】、【2】、【3】のアイコン、更には食事場のリヴァイアサンのアイコン。
そして、複数のメロウ達のアイコンがフロアの隅の部分に見える。
このアイコンの絵柄は……メア?
「――音が鳴ったわね……。ちょっと連絡しないと。あーもう、折角楽しい時間を過ごしていたっていうのに。邪魔なのはどこのどいつかしらね」
俺は女王の帰ってくる足音に気付いて慌ててスマホを手放した。
女王の独り言からして、あの振動が侵入、或いはイレギュラーを知らせる合図の可能性が非常に高い。
だとすれば……サイレントマナーモードに出来たのは監視を阻止出来たと言っても過言ではないのでは?
こんなに簡単な事なら、この部屋に来た時に出来たはずだったのに。
無駄に2日も消費してしまった……。
女王の性癖なんか出来れば知りたくなかった……。
『リヴァイアサン聞こえますか? 監視をなんとか解除出来たみたいなんですけ――』
『おーそーいーっ!! 中間報告位せんかぁああっ!! こっちから連絡したら邪魔になるかもしれんもんなあ、って考えてたんだぞ我はっ!』
『す、すいません』
『まぁ、監視が無くなったのは大きいな』
『はい。それに、【1】のシードンが城を離れたみたいです』
『そうか。丁度メロウの奴らがフロアの入り口に来たみたいだからな。これは都合がいい。やるぞ、このダンジョンから1度お前を逃がす作戦決行だっ!!』
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