第231話 女の子は……

「これは君が――」

『喋るなっ!』

「ん? どうした? もしや腹が減りすぎて待てないのか?敵陣にいるというのに……人間は中々図太い神経をしているんだな」


思わず声を出して会話をしようとしてしまうと、女の子が言葉を強めた。


幸いにも【3】のシードンが女の子と俺を疑うような事はなかったが、どことなく女の子の顔が険しくなっているように見える。


「そ、そういえば、暫く飯食ってなかったからなぁ。ど、どうせ逃げられないし、早く飯が食べたいなぁ」

「ふ、切り替えも早いな。そういった所は嫌いではないぞ人間。この人間は女王様の元で監禁予定……そうなれば暫くはペットのように扱われ、飯も女王様の気の赴くまま。下手をすれば飯は3日おき……いやそれ以上間隔が空くかもしれん。後生だ、人間にたらふく飯を食わせてやってくれ」

「……」


こくりと頷くと女の子はそそくさとその場を離れていった。

あの口調にテレパシー、やっぱりただのメロウとは思えない。


気になるな。


それにもしメアがここまで助けに来てくれたとき、この場所をよく知っている仲間がいれば何かと動きやすいはず。


少し動いてみるか。


「あー腹減ったな。でも下手な料理を出されたら食えないかも……。俺、というか人間って偏食が酷いんだよなぁ」

「そうなのか?」

「厨房で何作るか確認しながらならそういうこともないと思うんだけど」

「そうか、別にそれくらいなら構わんぞ。……よっと」


【3】のシードンは椅子と俺を掴み上げて厨房に移動し始めた。


想像通りの動き過ぎてなんだか怖いな。


俺の演技は大根丸出しな気もしたんだけど 。


「おい、人間は好き嫌いが激しいらしい。苦手なものを使われては困るから人間から直接指示をもらって料理を作ってくれ」

「……」

「お願いします」

「……」


女の子は再びこくりと頷く。

眉毛がぴくりと動いたのは、要らん事をしやがってと思われたからかな?


「……それにしてもここは俺には暑すぎるな。俺は外で待たせてもらう。人間、まだ動けないのは分かっているが下手な事をしようとすれば……」

「俺だって変に痛い目にあうのはごめんだ。安心しろ」

「うむ、賢い判断だ。ではメロウ、後は頼んだぞ」


そういって厨房の外に出ていった【3】のシードン。


よし、上手いこと女の子と2人きりになれた。


「あの――」

『待て! まだどこかで私達の様子を監視してるかもしれない。お前にも発信する力を分けるから口を閉じろ』


見た目からは想像出来ない口調で注意されてしまった。


『流石に今のは軽率だったか……』

『はぁ。まぁ分かっているならいい……』


いつの間にか俺の思考が女の子のメロウ?に読み取られ――


『――まず、それ……お前が我をただのメロウと思ってはいないのは何故だ?』

『やっぱり違うのか』

『質問に答えよ』


圧が凄――


『俺の知っているメロウと見た目も雰囲気もどこか違ったから』

『そんなものただの個性でしかないかもしれんだろ?』

『個性だけでここまでの雰囲気を醸し出せる訳ない。俺が今まで戦ってきた、なんならここの女王より強い何かを感じる』

『……修羅場を越えてきたから分かるという訳か。貴様は人間の中でも優秀な存在なのだろう。よかろう、他言しない事を信じ、教えてやる。我は【リヴァイアサン】誇り高き、海の竜だ』

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