第230話 テレパシー?

「まずはこの人間に栄養のある食事をとらせ、そうだな、湯浴みもさせてやれ。最高の状態にした上でもう一度私の元に連れてこい」

「女王様の意のままに」


女王は【3】のシードンに命令すると、俺の頬をペロリと舐め、自分の腰掛けていた椅子に俺を座らせ、その場を後にした。


俺を抱いた時の力強さや、このただならぬ雰囲気、女王自体の強さも相当なものなのだろう。


「さて、まずは人間に餌付けか……。【1】人間は生の肉は食べるのだろうか?」

「知らんな、そんなもの俺に聞くな。そもそも【3】が受けた仕事なんだからもうちょっと自分で考えろよ」


メロウと同じでシードンは生肉を主食にするタイプか……。


そんなの食わされたら腹下して女王とあーだこーだするどころじゃないぞ。


「……人間は生肉は食えない。場合によっては死ぬ。半端な物を食えば死ぬ」

「そうか、それは困ったな。俺は料理は出来ん……」

「……それは作れって事?」


【3】のシードンは【2】のシードンに視線を送った。

【2】のシードンはそれに気付き、やれやれといった表情を見せる。


「女王の食事係は【2】が担当だったろ?少し頼まれてくれないか?」

「女王が望んでる事だから断る理由はないけど……女王の食事は私が作ってるわけじゃない」

「そうなのか?私はてっきり……」

「食事場で給仕をしてる声のでないメロウ、あれが女王の食事も担当している」

「そうだったのか。助かった感謝する」


【3】のシードンは【2】のシードンに感謝を告げると俺を担ぎ上げ、走って食事場へと向かっていくのだった。



バンッ!


【3】のシードンは城の中にあった食事場というプレートがつけられた扉を勢いよく開けた。


「うっ!」


もちゃもちゃと肉を食らうシードンが10数匹。


食事場とは思えないほど、部屋の中は生臭さで充満していた。


こいつらよくこんなところで飯を食えるな。


「おい給仕、給仕はいるか?」


【3】のシードンはそんな生臭さに慣れているのか全く気にしていない様子で給仕を呼んだ。


多分こいつもここで飯を食らう、或いは食らっていたのだろう。


見たところいるのは【6】以上のシードンだけ。


俺からすればただ臭い場所でしかないがここは食糧難でも食事を提供してくれるエリートだけの特別な場所という扱いなんだろう。


「……」

「早速だが、この人間に飯を作ってくれ。どうやら人間は生肉を食うと死んでしまうようだからな」

「……」


呼ばれて出てきたのは、幼い女の子。


メロウの様に下半身ご魚の尻尾のようになっているが、『透視』を発動させても種族名は表示されないし、スキルも見えない。


それに気になるのは頭にちょこんと生えた一本角。


こんなのは俺が見てきたメロウにはなかった。

それに瞳の色なんかもどこか通常のメロウとは違って見え――


『あまり詮索はするな、人間』


じっとその女の子を観察していると、頭に言葉が流れた。


もしかしてこれ、この女の子が脳に直接語り掛けてきているのか?

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