第225話 メアの友人
「痛みは落ち着いたか?」
「……うん、ありがとう」
「トゲくんにポーションも飲ませたし、仲間を助けにいくか」
メアは軽く頷くとすっと立ち上がり、すたすたと歩き始めた。
切り替えが完了したのか、さっきまでと比べて表情がキリッとしている。
「まずは右端からでいい?1番大きく唄が聴こえてきたのはここみたいだったから」
「そうだな。でも何回も往復するのは……。ここはちょっと横着させてもらおうか『贋物』」
俺はスキルで分身を生み出すと、ノートを取り出して破り、その切れ端にメッセージを書いた。
そしてそれを持たせて分身には他の2つの階段を各々進んでもらった。
この先にあれ以上強いシードンはいないだろうし、任せてしまっても大丈夫だろう。
「本当に便利なスキル……」
「これで他も大丈夫なはず。俺達も先に進もう」
こうして俺達はようやく檻のある階段下へ向かい出したのだった。
◇
階段を下るとそこは灯りがほとんど無く、じとじとと湿った空間。
看守であろう1匹のシードンは眠っている様で、檻という体裁を整える為だけにいるのかと思うくらい。
「もしかして、メア?」
「その声はリモ?」
響いてきたのは可愛らしい女の子の声。
どうやらメアの知り合いらしい。
「暫く見ないと思ったらこんなところに……大丈夫?」
「ちょっと傷は痛むけど、大丈夫。他のみんなもさっきの唄で疲れただけで大丈夫、生きてるわ」
よく見れば奥に何人か横になるメロウ達が……かなり衰弱していそうだな。
「ごめんね。助けに来るのが遅くて……」
「別にメアが謝る事じゃないわよ。それにセレネ様も悪くない。まさかシードンがこんなに強くなっていたなんて思いもしなかったわ。それで……そっちのは人間?」
メアの友人のメロウは俺に鋭い目を向けた。
なんかもうこれも慣れたな。
「彼は仲間。大切で、頼りになる……」
以前とはうって変わってメアは落ち着いた様子で説明する。
「……メア、あなたもそんな風に話す様になったのね。さっきの唄、メアだって気付かないくらい美しいあの唄、あんな唄を歌える理由がよく分かったわ。あなた、メアを泣かせたらただじゃおかないから」
キツイ口調ではあるものの、敵じゃないと理解はしてくれたみたいだ。
今回は自傷行為は避けられたか。
「それにしてもあれだけ強いリモまで掴まるなんて……」
「【4】のシードンに唄が効かなかったのが、まずかったわ。まぁそれでも人数差もあるし勝てると思ったんだけど……。【3】のシードン、あいつはヤバいわ」
「そんなに強いのか?」
「人間、あなたもここにいるって事は【4】のシードンを倒した強者だとは思うけど――」
「これでも勝てなさそうか?」
俺は眠っていたシードンを『即死の影』を用いて倒す。
「凄いスキルだとは思うけど……。せめて私達に唄を歌えるだけのMPが残っていれ――」
バンっ!
その時唐突に壁が勢いよく破壊された。
その壁の破片に混じっているのは俺の分身……。
ゆっくりと俺達の前に現れたのは【3】が刻まれたシードンの姿だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。