第181話 エレベーター
「がぁ……」
唸り声をあげるシーサーペントや寝ているシーサーペント、それに顔を出さずに引っ込んでいるシーサーペントも。
何匹ものシーサーペントが各々で自分の時間を使っている。
ただ暴れだすような個体は居らず、全体的に大人しい。
「1階は飼育期間も少なく、まだこちらへの警戒が強めな子達ばかりです。ただどの子もここに入れている時点で反抗する意思は無くなっているので安心してください」
メチルダさんは圧倒される俺に対して淡々と案内をしてくれる。
事実今アルジャンとルージュがシーサーペント達にちょっかいを出しているが攻撃はしてこない。
すごい嫌そうな顔はされているけど……。
「今回メア様に与えられるシーサーペントはここにはいません。どうぞこちらへ」
俺達はメチルダさんの後について行き、搬入用のエレベーターに乗せられた。
シーサーペントを乗せるのだからこれ自体が大きい事には差程驚かないが……。
エレベーターとかまであるんだな、メロウの集落には。
「こちらは水上エレベーターです。このボタンを押すと下に仕掛けられた魔法紙が反応して水圧で上に押し上げてくれます」
「そんな魔法紙まであるんですね。外でもそんな魔法紙は見たことないですよ」
「外では必要はないのでは? 読み取った記憶によると外には私達では理解出来ないような動力があるとか」
「それはありますけど、電気を使わないというのはそれだけコスト削減になりますし……。これだけでちょっとしたビジネスになりそうな気も……」
「――そろそろ最上階に着きます。最上階は少し寒くなっていますので上着のあるかたは羽織って頂くようお願いします」
俺が新しいビジネスとそれに反応しそうな桜井さんの姿を思い浮かべていると、エレベーターは勢いを緩め始め、メチルダさんが注意を促した。
「準備はよろしいですか?では開きます」
エレベーターが完全に止まるとメチルダさんは俺達に視線を配るとそっと『開く』のボタンを押した。
「うおっ」
「冷たっ」
「「ひやひやっ!」」
凄まじい冷気が一気に流れ込み、俺は咄嗟に自分の肩を押さえた。
メアもこの階は初めてだったのか、相当驚いた様子だ。
「……あまり長居はさせられそうにありませんね。目的の子のところは近くです。早足で移動しますので、皆さん付いてきてください」
メチルダさんは俺達の様子を見て、足早に目的地へ移動し始めた。
それにしても厚着をしている様に見えないのに何でこんなに平気そうなんだ?
「――ここが今回メア様に与えるシーサーペントの部屋になります」
この階でも一際大きな部屋の前でメチルダさんは止まった。
シーサーペントの顔が見えないのは部屋の奥にいるからか?
「早速呼びますね」
メチルダさんは指笛を響かせる。
すると奥から一匹のシーサーペントが顔を出し――
「があっ!!」
メチルダさんの顔に思い切り氷の息を吐くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。