第68話 60
スルースライムゼリーの効果で俺は気付かれることなく群れの中に紛れる事が出来た。
それと、俺にとって好都合な事に、群れのファングヒポモスの内3匹がこの場から離れていったのだ。
俺がここまで追いかけてきたファングヒポモスもその中に含まれていて、恐らく、俺を狩るべくく仲間を呼んでさっきの場所へ戻るつもりなのだろう。
しかし残念な事に俺は敵陣中央であるここにいる。
階段を直ぐに駆け下りたい気もするが、経験値的にこの状況は勿体ない。
……殺るか。
俺は『透視』と『即死の影』を発動させると、そろりそろりとファングヒポモスに近づく。
ファングヒポモス達はここがセーフティエリアだと信じているようで、砂に潜る気配はない。
俺はそれをいいことに、まず水を飲もうとしているファングヒポモスの牙をジャマダハルで突いた。
「かぱっ!!」
痛みで声を上げるファングヒポモス。
牙は見事に真っ二つ。
他のファングヒポモスが驚くようにして、こちらに視線を向けたが取り敢えずはこいつの処理をする。
「か、ぱ」
鼻先にジャマダハルの2コンボが決まると、『即死の影』によってあっけなく1匹が消えた。
それに合わせるかのように残りのファングヒポモスが地中から襲いかかってきた。
スルースライムゼリーの効果で俺の姿が認識出来ないはずなのだが、その攻撃に迷いはない。
仲間がやられた位置に敵がいるという事実。だから、位置情報が曖昧でも襲ってきたのだと思う。
だがその程度の情報しか持っていない攻撃なんて避けるのは容易い。
2頭のファングヒポモスの突進は綺麗に空を切る。
そしてそんなお粗末な突進に合わせて俺はファングヒポモスの脚をジャマハダルで深く傷つけた。
その傷の所為で2頭のファングヒポモスはうまく突進を止まられず、そのまま池ポチャ。
俺はそんな隙を逃さず、『瞬脚』を使って追撃する。
「背中がお留守だぞ」
俺は2頭の尻にジャマダハルを突き刺し、挑発した。
するとファングヒポモスはムキになって身体を翻す。
俺はそのタイミングに合わせて2頭の牙を折った。
2頭は悲鳴さえ上げないものの、痛みからか体をよたよたとさせ、そのまま水の中へ。
全身を水に浸からせるが、砂の時と違い水に影が映り場所も形もはっきりとわかる。
それにファングヒポモスの速度は思いの外遅い。
「こんな簡単なもぐらたたきはないな」
俺はファングヒポモスが水面から顔を上げるタイミングで、その鼻先を突いた。
右に逸れた1匹を3発で『即死』。
「あと1匹はそっち――」
もう1匹のいる方を向き、ジャマハダルを構えると、ファングヒポモスのHPが回復している事に気付いた。
やつのスキルなのか、それとも……。
「とにかく、『即死』させれば問題ない」
気にはなったが、俺は敵を倒す事に意識を集中させる。
残りのファングヒポモスは俺に攻撃を仕掛けようとしているのか、俺の周りをぐるぐる泳いでいるようだが、それはバレバレ。
影だけでなく、水しぶきが上がっているのもマイナス点だ。
砂の中なら確かに強敵。だが、水の……浅めの水場ならそこまで脅威じゃない。
ばさぁあぁあ!!
大きな水しぶきが上がるとその中からファングヒポモスが襲ってきた。
俺は『瞬脚』でそれを軽く躱し、鼻先を刺す。
『+3000』
「やっぱりうまいな。経験値」
『レベルが60に上がりました。新たにスキル、『毒の神髄』を会得しました』
とうとうレベル60。
新たに会得したスキルにワクワクを隠せないまま俺は池を出る。
そして、俺は自分の体の変化に気付く。
「身体が痛くない……それに、なんか漲るような」
ステータスを表示して、HPを確認すると、さっきまで微妙に回復していなかったHPが全快。それにMPが少量だが回復していた。
レベルアップの際の回復っていうわけじゃない。
その時、俺の頭にさっきファングヒポモスがHPを回復するシーンが流れた。
「この池……ファングヒポモスがここに群れるのはそういう事か」
俺は池の水を両手で掬い上げると、そのまま口に含んだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。