第20話 パターン化

「≪透視≫! はぁあっ!!」

「ぐぅぁっ!」


 俺はミニドラゴンスライムのHPを削っていた今までの経験上、半分か3分の1、これくらい削れれば……。


「ご、あ、あがぁ!」

「きたっ!」


 地面に8つの赤い点。それにミニドラゴンスライムに黒い点。

 俺はまず8つの赤い点をジャマハダルで一気に切り裂く。

 

 ドロップ品がその場に散ってしまったのでこれは回収しておかないと。

 

 さっき戦っていたスルースライムとレッドメタルスルースライムのドロップ品もこれが終わったら回収しておこう。


「まずは、お前の中にいるレッドメタルスライムを吐き出させる!」


 ゆっくりと大きくなる黒い点をミニドラゴンスライムから吐き出させるために俺は再びミニドラゴンスライムを攻撃し始めた。

 

 HP回復の為に桜井さんの『ヒール』を多用したり、ポーションを多く飲ませるのは嫌なので、出来るだけ毒状態を使ってレッドメタルスライムを吐き出させたいのだが……。


「HPゲージが紫になりましたわ!」

「レッドメタルスライムが出てきます! 絶対触れないように気を付けてください! それとミニドラゴンスライムに『キュア』を!」

「はいですわ!」


 レッドメタルスライムはにゅるりとミニドラゴンスライムの口から姿を現す。

 それを確認して、桜井さんはミニドラゴンスライムに『キュア』を使った。

 もはやミニドラゴンスライムはレッドメタルスライムを召喚する為の道具でしかない。


 少しだけ心が痛むが、効率のいい経験値集めをするにはこれが最適で間違いないだろう。


「悪いがいい『カモ』になってくれ。はぁっ!」


 俺はレッドメタルスライムの急所目掛けてジャマハダルを突き出した。

 レッドメタルスライムは自分の硬度に自信があるのか、全く避けようとしない。とんだ慢心野郎だ。


「きゅっ!」

「耐久がさっきのと別なのか」


 驚くように声を上げたレッドメタルスライムだったがHPは8分の1程度しか削れていない。

 さっきまで戦っていたレッドメタルスルースライムより明らかに耐久が高い。

 

 これは少しめんどくさい。


 特に逃げるような素振りを見せ始めたら、残機7の嫌な鬼ごっこがスタートする可能性もある。


「きゅあっ!」

「攻撃してくるか! 好都合っ!」


 俺が思い描く中で最も最悪な展開はなさそうだ。

 しかし、一撃でもモロに喰らえば俺まで寄生される可能性がある。油断は出来ない。


 俺は万が一を考え、一度攻撃を避けた。

 速度はそこまでない。避けるのは容易……!


「きゅあっ!」

「後ろで!?」


 レッドメタルスライムは地面から跳ね返るように、後ろ向きのまま体当たりを放ってきた。

 地面に当たっては跳ね当たっては跳ね、まるで無限に跳ねるスーパーボール。


「着地狩りが出来ないなら……」

「きゅっ!」


 俺は正面の体当たりに狙いを絞ってカウンターをレッドメタルスライムに食らわせた。

 レッドメタルスライムはそのまま後方に軽く飛び、また体当たり攻撃を開始する。

 連続でダメージを与えられないのは歯痒いが、これなら問題なく勝てる。


「止めっ!」

「きゅっ!」


 レッドメタルスライムは呆気なく地面に落ち、『+3500』の数字とドロップ品だけをのこして消えていった。

 寄生しなければ大したことのない相手のようだ。さて、ドロップ品を回収するか。


『レベルが40に上がりました。職業補正として敏捷性が+15増加しました。スキル:火傷耐性を取得しました』


 敏捷性に新しいスキル。ジョブポイントは21でまだ次の解放は出来ない。

 取り敢えず、≪透視≫スキルだけレベルを上げておこう。


 俺は20のスキルポイントを≪透視≫に振った。

 これで霧対策が出来るようになればいいのだが……。


『≪透視≫がLV5になりました』

「よし……。桜井さん! もう一回いきます! 疲れはないですか?」

「ほーらほらほらほら、お手をしなさい。そうそう上手ですねぇ」

「桜井さん?」


 俺が桜井さんに目を向けると弱ったミニドラゴンスライムを躾けようとしていたのだった。


「はい。よく出来ましたわ! では回復させて差し上げますわね『ヒール』!」

「ごぁあ!!」

「うふふ、準備は出来ましたわ! じゃあ思い切ってこの子をいたぶって差し上げて!」


 ご褒美の回復からの滅多打ち。

 桜井さん……相当ドSだ。


「白石君! 早く攻撃してくださいまし! この子元気になると暴れるから、鞭を持ってる手が疲れますの!」

「は、はい了解です」

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