イベント

勝利だギューちゃん

第1話

今、僕はテレビの見ている。

画面には、ひとりの女の子が歌っている。


最近のアイドルは、グループが多いみたいだが、

単独で活動しているのは、珍しいと思う。

(芸能界詳しくないので、知らんけど)


画面の中のアイドルは、加藤玲亜という。

本名である。

実は知らない仲ではない。


面識はある。


彼女は、最近まで僕のクラスメイトだった。

あるアイドルオーディションで、難関を勝ち抜きグランプリになった。


そして、デビューを果たした。

それと同時に、上京をした。


でも、ただのクラスメイトというだけで、会話をした記憶はない。


まあ、普通女子高生くらいなら、僕のような陰キャは避けるな。


でも、売れっ子でも売れてなくても、芸能人に取って、営業は不可欠。

コンサートやライブも該当するのだが、最近は垣根が薄い気がする。


親父が学生の頃は、アイドルは手の届かない別世界の存在だった。


でも今では、握手会やら、バスツアーやら、交流が当たり前のように、行われている。


そして、加藤さんもイベントを出身地である近所で、行われる事になった。

興味はないが・・・


でも、招待状が届いた。

応募してないのに・・・


マネージャーや、事務所からの、NGはなかったのか・・・

芸能界とは、ようわからん。


だが、このコロナの影響で、イベントは中止となった。


会場は、近くのショッピングモールの屋上。

よく、キャラクターショーとかも、行われている。


「まあ、駆け出しなら、こんなところかな・・・」

会場となるはずだった、場所に行ってみた。


「佐倉くん」


その声に振り向いた。


「久しぶりだね、佐倉くん」

「加藤さん・・・どうして?」


加藤さんは、微笑む。

その微笑みは、画面で見る芸能人の笑顔とは違う。


「よく、僕の名前を知っていたね」

「馬鹿にしないで。友達の名前くらいは覚えてるよ」

「話した事ないんだけど・・・」


加藤さんは、溜息をつく。


「やはり、忘れてたんだね」

「何を?」

「私が、アイドルになれたのは、君のおかげなんだよ」

「僕は何も・・・」


加藤さんは、僕の手を引っ張る。


「加藤さん?」

「さあ、座って座って・・・」


僕はステージの最前列の席に着く。


「みなさん。今日は加藤玲亜のソロライブにようこそ」

「僕しかいないけど・・・」

(ライブでは、ないと思うが・・・)


しかし、加藤さんは続けた。


「今日は、私の夢を一番応援してくれた・・・

そして、私の一番好きな人に贈ります。」


さらに続けた。


「その人はクラスメイトだった男の子で、夢に向かってがんばっています」

「加藤さん・・・」

「彼のがんばる背中を見て、私も彼に追いつきたいと思いました」


おぼろげではあるが、記憶がよみがえる。

そうだ・・・

確か、一度だけ・・・


「佐倉昭夫くん」

「はい」

「今から歌う曲は、私から君へのメッセージです」

「メッセージ?」

「私が、君のために作詞作曲をしました」


一呼吸して、加藤さんは歌いだす。


「聴いてください。


『かすみ草へ、想いを込めて』

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イベント 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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