第132話 迷宮の守護者戦

「さて、やりますか」


 ヴィムたちはベイウルフと悪魔という二体の守護者と対峙する。


 ベイウルフと悪魔はそれぞれ狙いを定める。

ベイウルフはハナとディアナに向かって行く。

 

 悪魔の方はヴィムとミサに狙いを定めた。


「マスター、こっちは任せろ」

「ああ、任せた」


 ディアナの精霊術でベイウルフは足止めされている。

その隙を付いてハナが剣による近接攻撃を仕掛ける。


 見事に連携が取れており、確実にベイウルフへダメージを負わせていた。


「じゃあ、こっちもやりますか」


 悪魔は大きな鎌を横なぎに振るう。

それを、後ろに跳躍することで攻撃を逃れる。


「ミサ、少しだけ時間稼げるか?」

「はい、任せて下さい」

「頼んだ」

 

 そう言うと、ミサはヴィムの前に立つ。

その間にヴィムは詠唱を始める。


『白龍、黒竜に告げる。汝の身は我が元へ、我が命運は汝の剣となす。我が意、我が理に従うのならば堪えよ』

《召喚 白龍、黒龍》


『顕現せよ、我が声に応えよ。我が望むは狼の戦士ボスウルフ


 ヴィムが詠唱を終えると、魔法陣が三つほど現れる。

そこから、ゆっくりと召喚獣たちが姿を現す。


 白龍、黒竜、ブラックウルフのボスであるボスウルフが現れた。


「みんな、頼む。力を貸してくれ」


『お任せを、主人』

『いつでも主人様のお力になりましょう』

『久しぶりに我が主人のお力になれること、嬉しく思います』


 それぞれ、やる気に満ちているという様子である。


「ありがとう。白龍はあっちを頼む」


 そう言って、ヴィムはベイウルフの方を指刺した。


『承知』


「黒竜はこっちの悪魔を頼むよ」

『かしこまりました』

「ボスウルフは揺動を頼む。できるだけ攻撃を引きつけてくれ」

『承知しました』


 ボスウルフは走り出して、ベイウルフの攻撃を引きつけてくれている。

その間にディアナの精霊術がベイウルフに確実にダメージを与えている。


 あっちはハナとディアナ、白龍に任せておけば大丈夫そうだ。


「ミサ、お待たせ。よく持ち堪えてくれた」

「このくらいなら、大丈夫です」

「ここからは、こっちのターンだ。黒竜、好きなだけ暴れろ」


 黒竜は青白いブレスを悪魔に向かって放つ。

悪魔はそれを鎌で切り裂いた。


 次の瞬間、黒竜は飛び立たち、悪魔の頭上へと移動する。

悪魔は空を飛ぶ手段は持ってないので、これに対抗するのは難しいだろう。


 黒竜の鋭い爪が悪魔に突き刺さる。

流石の悪魔でも、これにより一瞬の隙が生まれる。


「その鎌、邪魔だな」


 ヴィムは呟く。


《エンチャント》


 拳に魔法を付与する。

そして、悪魔との間合いを一気に詰めると、鎌の刃の部分を狙って拳を打ち込んだ。


 すると、その鎌はバラバラに砕けて意味を無くした。


「これで、武器は無くなったな」


 ヴィムはニヤリとした黒い笑みを浮かべる。

悪魔は意味をなくした、鎌をその場に放り投げた。


 だが、まだ油断はできない。

悪魔の戦闘能力は頭一つ抜けて高いと言う。


「ヴィムさん、私と黒竜さんで隙を作ります。その間にあの魔法であいつを倒せますか?」

「わかった。それで行こう」


 そう言うと、ヴィムは再び一歩引いた。


『光の精霊王と契約せし者が願い奉る。我に光の精霊の加護を授けよ』


「ミサ、離れろ!」

「はい!」


《グラフィックゲート》


 ミサと黒竜が悪魔と距離を取ったことを確認すると、光の最上級魔法であるグラフィックゲートを展開する。


 大きな光の扉が召喚され、ゆっくりと扉が開く。

そして、扉から悪魔に向かって一直線に光が放たれた。


 悪魔は防御体勢に入ったが、それが意味をなすような魔法ではない。

光に飲み込まれ、悪魔が光によって溶かされたのを感じた。


 数分に渡ったグラフィクゲートが、光を失うと、そこには悪魔の姿などは跡形もなく消えていた。

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