第129話 迷宮八階層

七階層の攻略を終えて、ヴィムたち一行は八階層へと足を踏み入れる。

マナの濃度がさらに上がったのを感じる。


《エンチャント》


 ヴィムは、ハナとミサに分け与えていた魔力濃度をさらに上げた。


「大丈夫か? マナがかなり濃いけど」

「はい。でも、ヴィムさんの魔力が無かったらキツかったです」

「そうですね。まさか、ここまで強いとは……」


 ミサは元々、近衛騎士をやる前は帝国騎士団に居た。

迷宮に入る機会もそれなりにあったはずだ。


 そのミサがここまでなるということは、通常の迷宮とは桁違いなのだろう。


「確かに、これはかなり濃いよな」


 ヴィムのような魔力保持者でもこれは濃いと感じる。


「足元気をつけてな」


 数年の間に渡って、誰も立ち入って無いということから、迷宮内はかなり荒れている。

ディアナの精霊術で照らされているとはいえ、注意が必要だ。


「マスター、また何かヤバめの奴がくるぞ」

「ああ、みたいだな」


 八階層の探索を進めていると、ヴィムの索敵魔法に強い魔力生命体がこちらに向かってきているのを感じた。


「マスター、これ、戦わなきゃならんよな」

「倒さなきゃ通れないからな」


 ヴィムたちの目の前にはクリアゴーレムが現れた。

その全長はヴィムの身長の倍はあると見える。


 クリアゴーレムとは、その名の通り、ガラスのような透明な体をしたゴーレムである。

透けて見えるのが特徴で、ガラスとは違い、その防御力は通常のゴーレムよりも高いと言われている。


「ミサ、ハナ、クリアゴーレムは胸の核が弱点だ。それを破壊すれば勝てる」

「了解です」

「わかりました!」


 そして、最大のポイントとして、クリアゴーレムは魔力を吸収するというものだ。

魔法を主な攻撃とするヴィムやディアナには分が悪いというわけだ。


「マスター、私は攻撃しない方がいいよな?」

「そうだな。精霊術も吸収するんだっけ?」

「確かな。直接攻撃を与える術じゃなければ大丈夫なはずだ」


 ゴーレムの体に当たった魔法は吸収されてしまうが、直接体に当たらない魔法だったら、吸収されることは無い。


「じゃあ、ディアナは撹乱だけ頼む」

「承知した」


 そう言うと、ディアナは一歩引いた。


「よし、やりますか」


 ヴィムは拳を握りしめると、ハナとミサの間に立った。


「ヴィムさん、何をするつもりですか? クリアゴーレムに魔法は効きませんよ」


 ミサがその様子を見て言った。


「魔法が効かないなぶん殴ればいい」


 ヴィムはニヤッと笑いながら言った。


「魔術師が言うセリフとは思いませんね」


 ミサとハナは苦笑いを浮かべていた。

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