第128話 迷宮七階層

 スタミナ回復のポーションを飲み干すと、一気に体が軽くなった。

さすがは、自分で調合しただけのことはある。


「それじゃあ、次の階層へ行きますか」


 ヴィムは立ち上がると、ローブに付いた砂埃を払いながら言った。

エリア守護者を討伐したので、次の階層へと繋がる階段が出現している。


「そうですね。今日中には最深部まで行きたいですし」


 エリア守護者の討伐に手こずった為、割と時間がかかってしまった。

それでもまだ、迷宮に入ってからちょうど半日といったところだろう。


 普通は迷宮を攻略するというのは、精鋭たちのパーティでも何日もかかるのが定石である。

それを、ヴィムたちは一日でやってしまいたいというのだ。


 このパーティがいかに『規格外』かということが分かるだろう。

ヴィムたちは階段を降りて、七階層へと立ち入った。


 七階層のマナはなかり濃いものになっている。

確か、一番最近入ったパーティが攻略したのが、五階層までだったはずだ。

六階の守護者にやられて、命がけで帰還したと聞いている。


 そのため、七階層に入るのは実にヴィムたちが五年ぶりとなってしまう。

五年も前の情報では、今の状況とかけ離れているため、役に立たない。


「ここからは本当に情報が無いからな。より慎重になっていこう」

「そうですね!」


 ヴィムは索敵魔法を展開する。

それを頼りに探索を進めて行く。


「グレーウルフか」


 ヴィムたちの正面に、グレーウルフの群れが現れる。

一体一体は大して協力ではないが、数が多い。

二十体はいるだろう。


 グレーウルフはスピードが速い。

それが、群れで掛かってくるのはそれはそれで面倒なのである。


 特に、グレーウルフの牙には神経毒がある。

噛まれたりでもしたら最悪の場合、死に至ることもあるほどだ。


「ここは俺が引き受けよう」


 グレーウルフ相手だと、接近戦ではこちらが分が悪い。

ヴィムは、ハナとミサの前に立った。


 グレーウルフがヴィムたちに向かって、一気に距離を詰めてくる。


『炎帝よ。焼き尽くせ』


 ヴィムの正面に真っ赤な魔法陣が現れる。

そこから、火炎放射のように炎が放出し続ける。


 飛び込んで来たグレーウルフはその、炎に焼かれて行く。


「終わりだな」


 数分間、火炎放射は続き、グレーウルフは消し炭になっていた。


「核まで燃やしちゃったけど、まあ、いいか」


 グレーウルフの核は売ったとしても、たかが知れているくらいの値段である。


 グレーウルフの亡骸を飛び越えると、再び探索を進める。


 しばらく歩いていると、ヴィムたちは次の階層へ降りる階段を発見した。


 

 

 




 

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