第122話 迷宮一階層

 翌朝、準備を済ませたヴィムたちはモール大迷宮に出発する。

迷宮に一番近い街というだけあって、十分と少し歩いた所で迷宮の入り口に到着した。


 ここまで来る途中、冒険者と思われる人が何人か見られたが、この迷宮には近づきはしないようである。

死者まで出している迷宮に潜るもの好きはそう居ないし、迷宮に入るのも許可が必要だ。


 今回、国王陛下の許可が下りているので、ヴィムたちは問題なく迷宮に入ることができた。


「ディアナ、頼む」

「うむ、任せよ」


 ディアナの精霊術によって、迷宮内が光で照らされる。


「二人は大丈夫か?」


 まだ一階層というのに、マナ濃度がかなり濃いように感じる。

ヴィムとディアナは保有しているマナの量がそもそも多いので問題ないが、魔力適性が低いハナとミサにはキツいかもしれない。


「はい、なんとか」

「私もです」


 二人の表情は少し引き攣っていた。


「無理はするな」


《エンチャント》


 ヴィムは二人に自分のマナを分け与えた。


「これでどうだ?」

「楽になりました」

「私も、随分と動きやすいです」


 ヴィムのマナの一部を一時的に、ハナとミサに分けることによって、マナ濃度が濃い環境下でも問題なく動くことが出来るようになるのである。


「よかった。それじゃあ、行きますか」

「私たちが前を行きます!」


 そう言って、ハナとミサが前に出た。


「わかった。トラップもあるあもしれないから気をつけろよ」

「了解です!」


 ハナとミサを先頭にして、一階層の探索を始める。

一階層なら、Bランク以上の冒険者ならまだなんとかなるだろう。

しかし、一階層でこの荒れ方とマナの濃さでは、先が思いやられる。


《トレース》


 ヴィムがトレースの魔法でトラップが仕掛けられていないことを確認しながら、進んで行く。


「魔獣が来るぞ」

「了解です」

 

 ヴィムたちの前方から、ゴブリンの群れが現れた。

その数は二十体ほどである。


「行きます!」


 ハナとミサは剣を抜く。

そのまま、ゴブリンたちに突っ込んで行く。


 次々とゴブリンの首と胴体が切り離されて行く。


「俺たちも援護するか」

「いや、マスター、今は彼女たちだけにやらせてみたらどうだ?」


 魔法を展開しようとするヴィムをディアナが止めた。


「そう、だな」


 ここ最近はいつもヴィムが相手を抹殺してきた。

彼女たちに自信をつけさせるためにも、ここはハナとミサだけにやらせてみようと言っているのだ。


 本当に危険が迫ったと感じたら、ヴィムが手助けすればいい。


「ヴィムさん、終わりました!」


 数分もしないうちに、ゴブリンの亡骸が積まれていた。


「さすがだな」


 ヴィムとディアナの前では少し霞んでしまっているが、この二人も立派な実力者なのである。

AランクとSランクの実力は十分にあるだろう。


「よし、先に進むか」


 ヴィムたちは再び、迷宮の中を進み始める。

そして、次の階層へと進む階段を見つけたのであった。

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