第112話 情報戦②
王宮から帰ると、ジェームズが出迎えてくれる。
「おかえりなさいませ。旦那様にお客様がいらしゃっております。応接間でお待ち頂いております」
「ん? 俺に客?」
「左様でございます。ヘルムートギルドマスター殿が旦那様にお会いしたいと」
「分かった。ありがとう」
ヴィムは急足で応接間へと向かう。
ギルマスがわざわざ訪ねてくるというのは、今回が初めてだ。
おそらく、急ぎの用事なのだろう。
「すみません。お待たせして」
「いや、気にしないでくれ。こちらが、急に訪ねてしまったのでな」
ギルマスはいつも通りの笑みを浮かべる。
「何か緊急の御用ですか?」
ヴィムはギルマスの対面のソファーに腰を下ろして尋ねる。
「ああ、例の人身売買組織の件で伝えたいことがあってな。ヴィムが最近熱心に調べていると聞いたからできるだけ早い方がいいと思ってな」
「それは、ありがとうございます。新しい情報ですか」
「まあ、そうだな。これは直接関係あるかはまだ分からないんだがな、これを見てくれ」
ギルマスは、ギルドの諜報部が上げた報告書を机に置く。
「これは……」
「明かに不自然に武器が流れている。ここはグリフィントの国境が近くにあるし、例の組織の目撃情報も出てると聞くからな」
報告書には、爆薬や剣、弓、槍が正規のルートでは無い道を辿って流れている。
爆薬もかなりの量が流れているようだ。
「この爆薬の量なら、街一つは吹っ飛ばせますよ?」
「そうだな。だから、資金力もある例の組織と関わっているんじゃ無いかと思ってな」
「ギルマスは、どこまで知っているんですか?」
「王宮情報調査室がアジトを見つけたという所までかな」
ギルマスが右の口角を上げる。
「全部じゃないですか。凄いですね」
「まあ、あいつらは秘密主義だからな。こっちから探って行かなきゃな」
「さすがです。でも、これはかなり有力な情報です。ありがとうございます」
「役に立ったようなら良かったよ。じゃあ、ワシは本部に戻るとするよ」
ソファーから立ち上がり、ギルマスは屋敷の玄関へと向かう。
ギルマスを見送ると、ヴィムは資料を持ってリビングのソファーに体を預ける。
「ディアナはどう思う?」
「だいぶ信憑性が上がったんじゃないか?」
「だよな」
二つの情報を照らし合わせると、ここにハナの故郷を潰した人身売買組織があると見て矛盾しない。
「行ってみるか」
「我は、マスターに付いて行くのみだ」
遅かれ早かれ調査はしないといけない。
アジトがなければまた調査を続ければ良いだけのことだ。
「ジェームズ、この情報ってジェームズの所にも入ってる?」
ヴィムは執事のジェームズにギルマスからもらった資料を見せて尋ねる。
ジェームズの情報網は尋常じゃない。
王都だけ出なく、この国で何か動きがあれば情報は集まってくるのだとか。
「確かに、裏の武器商人が最近やたら活発に動いているという情報は入っていますね。ここに流していると考えたら辻褄が合います」
「さすがだな。ありがとう助かったよ」
ギルマス、ディアナ、ジェームズの意見を総合すると、アジトがある可能性は高くなった。
ヴィムはこの情報にかけてみることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます