第87話 対魔人戦
ヴィムは魔人と対峙する。
幸い、この場所は周りに何もない。
大きい魔法をぶっ放しても問題ないだろう。
「悪いが、手加減出来ねぇからな」
ヴィムが魔人に向かってつぶやいた。
《断絶結界》
自分の後方に断絶結界を展開する。
滅多に使わない最上級魔法を使うので、そのままでは巻き込まれてしまう可能性がある。
騎士団とハナとミサを守るような形で断絶魔法を展開した。
「いくぞ、魔人野郎!」
ヴィムの声を皮切りに魔人が攻撃を開始する。
当然ながら、無詠唱でポンポンと上級魔法が飛んでくる。
それをヴィムは跳躍してかわす。
後ろの断絶結界に魔人の攻撃が直撃する。
結界に吸収されているが、あんなものを直に食らったら待っているのは死の一択であろう。
《ライトニング》
ヴィムは無数の光の矢を展開する。
その数は2000本である。
その矢が魔人に向かって飛んで行く。
しかし、魔人はその攻撃を避ける事なく、そのまま受ける。
「ッチ、足止めくらいは出来ると思ったんだがな」
魔人はその攻撃を受けても無傷であった。
「強いな……」
ヴィムが前に戦った魔人よりも強いと感じる。
「オマエ、殺す」
それは魔人から放たれた言葉だった。
「魔人が、喋った……」
これには流石のヴィムも衝撃が走った。
魔人は理性が完全に崩壊した存在である。
その為、人間の言葉を喋ることは出来ないのだ。
「ヤバいかもな。もう、後には弾けないよな」
『光の精霊に願い奉る!』
《セラフィックゲート》
全員の魔力と血液が減少して行くのを感じる。
ヴィムでさえ、これ程の代償を払わなければ使えない魔法。
光属性、最上級魔法である。
「あれは……」
カミル騎士団長が驚きの表情を浮かべた。
「カミルさんは知っているんですか? あの魔法を」
「一度だけ、魔術師長から聞いたことがあります」
ハナの問いにカミルが答える。
「光属性の最上級魔法でありとあらゆる物を溶かし切る。魔力の消費だけでなく、使うには血液まで持っていかれる。最後の砦と言われている魔法です」
「そんな……」
「もう、使える者は居ないと言われている魔法です。歴代使えたのは150年前の賢者のみ」
「では、ヴィムさんは賢者の域に至っているという事ですか?」
ハナでも賢者のことは知っている。
この世界を魔神から救った英雄である。
王都の中央に賢者の像も立っている。
「まさかとは思いましたが、そういう事になりますね……」
「ヴィムさんは大丈夫なんでしょうか? 相当な代償を捧げていますよね?」
「わかりません。しかし、今は彼を信じるしか道はありません」
この場に魔人と正面切ってやり合えるのはヴィムしか居ない。
それは誰もが分かっている事実である。
「吹っ飛べ」
ヴィムが呟くように口にする。
詠唱によって現れた巨大な光の扉。
その扉がゆっくりと開かれた。
扉が開くとそこから強烈な光が放たれる。
その光の光線の前に魔人はなす術が無くなったようである。
光が消えた時には魔人だけではなく辺りの木や草も完全に消滅していた。
「終わったな」
そして、ヴィムはその場に倒れた。
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