第69話 冒険者の街
少しだけ昼寝するつもりだったのだが、目が覚めると空は茜色に染まっていた。
そして、頭から頬にかけて何やら柔らかい感触が伝わってきた。
馬車の座席のクッションとは違った感触である。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
ヴィムの顔を覗き込むようにミサが言った。
「お、おはよう」
ここにきて頭の感触の正体が分かった。
ミサの太ももの感覚だったのだ。
「え、いつから膝枕されて他の?」
「そうですね。ヴィムさんが寝てから数分経った頃からでしょうか」
ミサの話からするに、かなりの時間膝枕をされていたことになる。
「ごめん。足、痺れたりしてない?」
そう言いながらヴィムは体を起こした。
人間の体の中で頭の部分が1番重たいという。
「大丈夫ですよ。ハナさんと交代でしてましたから」
「マジか。二人ともありがとう。おかげていい睡眠が取れた気がするよ」
定期的に膝枕が交代されていたにも関わらず、ヴィムは目を様さなかったのだ。
「相当、お疲れのようですね。あまりご無理なさらないでくださいね」
ハナがヴィムの体を心配するように言った。
「まあ、ここ最近色々立て込んでたからな」
そして、今日は次の街で一泊することにした。
今日も想定外の出来事はあったが、無事に予定していた街には到着することができた。
♢
翌朝、今日も太陽が完全に昇りきる前に出発をする。
おそらく、今日の夕方には到着するはずである。
宿屋を出ると、ロルフが馬車を停車させて待っていた。
「今日もよろしくお願いします」
「かしこまりました」
ヴィムはハナとミサに手を貸して馬車に乗せると、自分も馬車に乗った。
そして、街を出発すると今日は特に問題なく馬車は進んで行った。
大抵の魔獣たちはヴィムが殺気を放つと引っこんでいく。
「ヴィム様、もう少しで冒険者の街ハイムに到着いたします」
御者台の方からロルフの声が飛んできた。
予定よりは少し早い到着にはなっただろう。
何はともあれ、日が暮れる前に到着することができてよかったと思う。
冒険者の街ハイムに到着すると、馬車は中央通りを抜けて行った。
馬車の窓から外を眺めると、ほとんどが冒険者の装いをしていた。
流石は『冒険者の街』と言われるだけのことはある。
装いから推測するに初心者から中級の冒険者が大半を占めているのだろう。
「到着いたしました」
ロルフの声と共に馬車は停車した。
馬車の外を見るとそれなりに大きなお屋敷が存在した。
「ハイムの街の領主様のお屋敷です。ご挨拶をするようにと陛下から申しつかっております」
「分かった」
ヴィムは馬車から降りると、ハナとミサに手を貸して馬車から降ろした。
そして、そのまま領主邸の玄関へと向かった。
玄関の前に立つと従者によって扉が開かれた。
「ご案内いたします。こちらへどうぞ」
ヴィムたちは応接間へと通されたのであった。
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