第64話 調査依頼

「実は、ヴィムさんたちの実力を見込んでお願いしたいことがあります」


 対面に座るギルマスが口にした。


「頼みとは何でしょうか?」

「実はですね。ここから馬車で3日ほどの距離の所に『冒険者の街』と呼ばれることろがあります。そこに新しい迷宮が発見されたのです。その調査をお願いしたいのですが」


 迷宮はどんどん新しいものが自然発生していく。

冒険者の街、ハイムでは特にその発生率が高いらしい。


「この依頼が俺たちに回ってくるということは、推定迷宮ランクが高いんですね」


 迷宮には難易度に応じてランクわけされている。

D、C、B、A、Sといった順番に難易度は上がって行く。

迷宮のランクは調査結果によって決定するので、あくまでも今は推定のランクになる。


 低いランクの迷宮ならBランク冒険者で十分なはずだ。

それをSランクのヴィムに話を持ってきたということは低いランクではないはずだ。


「その通りだ。この迷宮の推定はS級だ」

「なるほど」


 S級というと最高ランクの迷宮である。

その辺の冒険者では太刀打ちできないほどの力を持った魔獣が多いことが予想される。


「もちろん、きちんと報酬は出すし道中の交通費も支給する」


 これはギルドを通している行政機関からの依頼だろう。

報酬の未払いなどの心配は無いと見ていい。


「僕は大丈夫ですが、二人は?」

「ヴィム様がいいなら異論はありません」

「私もだ」


 二人とも異論はないと言ってくれた。


「分かりました。お引き受けさせていただきます」

「本当に助かります。このレベルの依頼を任せられるのはヴィムさん以外に思い付きませんでしたから」


 ヴィムはギルマスと握手を交わした。


「それでは、明日にでも出発しようと思います」

「よろしく頼む。ハイムのギルド支部長には私の方から話を通しておきます」

「ありがとうございます」


 まだ調査前の迷宮に入るには最寄りのギルド支部長の通行許可証が必要になってくるのである。

それがないと、迷宮に近づくこともできない。


「それと、これが依頼書です」

「頂戴します」


 そこにはギルド本部で依頼を出したという旨とギルマスのサインが入っていた。


「これをハイムの支部長に見せたら通行証を発行してくれるはずです」

「分かりました。では、私たちはこれで失礼します。出発の準備をしますので」


 そう言うと、ヴィムたちはギルド本部を後にした。

ギルドから屋敷までの道のりをゆっくりと歩いていた。


「そうだ。ミサにもこれあげるよ」

「何ですかこれ?」

「マジックバッグだ。明日の荷物をそこにまとめてくれたらいい」


 ヴィムは隣を歩くミサにマジックバッグを手渡した。


「そんな高価なものいいんですか?」

「余ってるからな。ハナにも渡してるからミサにもって思って」

「そういうことなら、ありがたく頂戴します」


 長旅にはマジックバッグはあったら便利なものの代表格ではないかと思う。

そんなやり取りをしながらもヴィムたちは屋敷へと到着したのであった。

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