第43話 討伐許可

 騎士団長の元を後にすると、ヴィムたちは自分の屋敷へと帰る。

騎士団の宿舎からはちょっと距離があるのが難点だろうか。


 それでも数十分歩けば屋敷に到着した。


「お帰りなさいませ」


 屋敷に戻るとジェームズが出迎えてくれる。


「ただいま。また、屋敷を開けることになるかもしれない。騎士団の討伐に同行すことになりそうだ」

「かしこまりました。今度は騎士団ですか。お疲れさまです」


 ジェームズはそう言うと、仕事に戻っっていく。


 ヴィムは自室に向かうと書簡を作る。

ギルドと陛下に騎士団に同行するおとを許可して貰いたいという旨を示した書簡を作成し、封蝋をつける。


 書簡を作り終えると、部屋を出る。


「悪いんだけど、この書簡、出してもらってきてもいい?」


 ヴィムはアーリアに声をかけた。


「かしこまりました。すぐに行って参ります」

「ありがとう」


 アーリアは2枚の書簡を受け取ると、それを出しに屋敷を後にした。


「ジェームズ、ちょっといいかな」

「はい、どうかされましたか?」


 仕事の手を止め、振り返った。


「最近、人身売買の組織があるらしいんだけど何か知っていることある?」


 ジェームズはこの国のありとあらゆる所に繋がりがある。

もしかしたら、何かしらの情報が入って来ているかもしれないと思った。


「国も調査しているというあれですね」

「やっぱり知ってたんだ」

「はい。その情報は入ってきていますが、肝心の組織の情報は私の元にも入って来ておりません。お役に立てずに申し訳ございません」


 ジェームズの所にも情報が入っていないとなると、これは一から調べていくしかないだろう。


「いや、ありがとう」

「私の方でも探りを入れてみますか?」

「頼めるか?」

「かしこまりました。何か分かり次第ご報告いたします」


 ジェームズの情報網はとてつもない。

元王宮に仕えた執事だけのことはあり、表社会から時には裏社会の人間にまで繋がりがある。

裏社会の人間ならこのことも何か知っているかもしれない。


「助かるよ。俺の方でも調べてはみるわ」

「かしこまりました」


 ヴィムはそう言うと、書斎に戻ると報告書の類に目を通していく。

Sランク冒険者にもなると、国中の重要案件の報告書が回ってくる。

この報告書に目を通していくのもヴィムの仕事なのである。


 しばらくすると、扉をノックする音がした。


「どうぞー」

「失礼いたします」


 扉が開くと、アーリアが書簡を手にやってきた。


「騎士団より、討伐計画書が届いております」

「ありがとう。もらうよ」


 早速、討伐計画を送って来てくれるとは騎士団も仕事が早い。

ヴィムは封筒を開けると、討伐計画を確認する。


「まあ、この計画が無難だろうな」


 その討伐計画に不備はない様子であった。

討伐までにはまだ時間がある。

それまでに準備を整えるとしよう。



 ♢



 翌日、アーリアが2枚の書簡を手にヴィムの部屋にやってきた。


「王宮とギルド本部より書簡が届いております」

「ありがとう」


 ヴィムはその書簡を受け取ると、中身を確認する。

その内容は二つとも、騎士団に協力してやってほしいというものであった。

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