第17話 新しいローブ

 屋敷を出てしばらくジェームズの後を歩いていた。


「こちらでございます。ここは私の旧友がやっている店でして、品質はいいですから」


 屋敷からは20分ほどの所にある呉服店だ。

ジェームズの後に続くようにして店内へと足を踏み入れた。


「いらっしゃいませ……ってジェームズじゃないか。久しいな」

「お久しぶり。今日はうちの旦那様の服を見繕ってもらいたい」

「ほう、主人が変わったとは聞いていたが、随分若いな」


 店主の男は俺の方に視線を移して言った。


「ヴィム・アーベルと申します」


 そう言って、軽く頭を下げた。


「知っているよ。貴方はこの国ではすでに有名人だ。私はダリルです。よろしく」

「よろしくお願いします」


 ヴィムはダリルと握手を交わした。


 Sランク冒険者に認定されると、名前が公表される。

世界にも数人しか居ないSランク冒険者の名前なんてのは一瞬のうちに広がって行くのである。


「それで、今日はどんなものをお探しで?」

「これと似たようなローブがあれば助かる。あと、シャツとパンツも何枚か欲しい」


 ヴィムは羽織っているローブを一度脱いで、ダリルに見せた。


「これは、特殊な加工がしてありますね。これはご自身で?」

「よく分かりましたね。そうです。自分で魔法を付与してあります」


 ヴィムのローブには魔法攻撃の耐性がある付与魔法をかけてあった。

これを見抜ける人物はそうは居ないと思っていなかったのだが。


「服屋を始めて随分と経ちましたからね。付与されているものくらいはわかるようになります。似たようなのをお出ししますので少々お待ちください」


 そう言うと、ダリルは店の奥へと向かって行った。


「これなんてどうでしょう?」


 しばらくして、ダリルは一枚のローブを持って戻ってきた。


「羽織ってみても?」

「もちろんでございます」


 ヴィムはダリルからローブを受け取り、羽織ってみた。


「うん、軽くていい感じですね」


 今着ているものと大きな差はないように感じた。


「これにします。これください」

「ありがとうございます。シャツとパンチはこちらにございますので」


 そこから、シャツとパンツも数着購入することにした。


「では、お包しますね」


 ヴィムは代金を支払うと、服の入った紙袋を受け取った。

それなりのお値段になってしまったが、ローブには妥協できなかった。


「ありがとうございました」

「こちらこそです。今後ともご贔屓に」


 そう言うと、ヴィムはジェームズと共に店を出た。


「いい店を紹介してくれてありがとう。おかげでいいものが手に入ったよ」

「とんんでもございません。お役に立てて何よりでございます」

「じゃあ、とりあえず帰ろうか」

「かしこまりました」


 ヴィムたちは一度屋敷に戻ることにするのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る