第22話 時期尚早

いつになったらこのグループ抜けられるかな。タイミングを伺う私と何かに気づいたようなあなた。ぼーっとしてるみたいに見えるけど。どっちが本当なの。引き留めてよなんて言えない。ワガママな彼女みたいだし。こんなに人がいたらいらないでしょ。可愛いなんて言われたくない。かっこいいもお断り。私はアイドルじゃない。推しを推すほうのアイカツしてる。誰がいても誰もいなくても私は私だったしこれからもそうなのだ。それに、横目で見たこの子が疎ましい。私のせいで評判に傷がついたら何をもって詫びればいいのだろう。私と仲良くしていても宿題のときしかメリットない。ひとに好かれたくて愛想振りまいているんじゃありません。いいこと、わたくしひとりには慣れておりますの。ですからみなさんはわたくしをいないものとして扱ってくださいませ。何かお嬢様言葉で言い直したら頭冷えた。もう少しこのままでいいかも。ねぇ一緒に実習室行こうよとか言わなくても私の横の席があなたの席なんだから。それでいいじゃない。利用できないならガラスの蓋をするしかない。薔薇みたいにケースにいれて飾ろうか。どこに置いたらいいと思う?この言葉使いもいつかは古くなるかしら。勘違いするようなら私が正してあげるよ。私の方がいつだって正しかったじゃん。たまに間違うけど大したことない。黒い羊扱いされるくらいなら私が透明になる。そんなことを考えながら張り付けた笑みはちゃんと笑えてたか自分でもわからないくらいだ。女の子って損だ。過剰なくらい心配するし空回りしても何も残らない。私が間違ってるわけないじゃない。でもあなたも悪くはないのよ。裏をよまれたら終わりだけど。誰か頭のいい人のてのひらに乗せられてくるくるといつまでも踊っているだけなんだわ。神のような存在がいればそれで充分でしょう。信じられるものが必要なんです。古めかしいステップは捨ててボロボロになったシューズのリボンを交換しよう。わたしの爪先は爪が折れ汚れてるけど踊るのをやめるのが怖くてそのときがくるまで踊ってる。ダンスの相手がいなくてもずっと。哀れなくらいに踊るのだけが上手くなって、誰もいない部屋で明かりもつけずに。瀕死の白鳥は水面下でバタ足をする。踊ることだけが矜持になってしまった。他のことに気が回らないくらい頭が踊りすぎていっぱいになってる。それでもあなたは幸せというのですか。無理して踊り続けるくらいなら誰かに代わってもらえばいいのに。

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