第15話 不老不死
【不老不死】
ある日私は公園を散歩していた
するとあるホームレスが私に話しかけてきた
「何か食べ物を下さい・・・」
やつれた顔でそう言うと男はその場に崩れ落ちてしまった
不憫に思った私は近くのコンビニで弁当を買ってその男に渡した
「これでも食べなさい」
男は礼を言うと弁当をむさぼり食った
「なぜホームレスになったんですか?」
私がそう尋ねると男は悲しそうに
「職に就けないんです」
今は不況だから・・・私は同情した
「では生活保護は?」
私はホームレスはいくばくかお金が支給されているのを知っていた
「もらえないのです」
私がその答えに驚くと同時に、男が奇妙な事を言い出した
「その・・・戸籍上私は死んでるんです」
はぁ?
私の困惑をよそに男は話を続けた
「私は300年前に生まれました・・・今300歳なんです」
ばかな・・・確かに小汚い恰好はしているがどうみても
20代から30代に見える
「いくら役所に言っても信じてもらえないんです。
だから職にも就けずこのような・・・」
私はからかわれたとしか思えなかった
「私の事をからかっているのだな?けしからん!」
私が怒ってそう言うと彼は
「からかってなどいません・・・あなたも信じてくれないんですね」
「でしたら50年後にでもまたこの公園にでも来て下さい」
そういうと男は一礼してその場を立ち去った
それから50年後、私は80歳になり、
ふと50年前のこのやり取りを思い出し
再びこの公園にやって来た
「すいません何か食べ物を・・・」
聞き覚えのある声だった
「まさか!?」
男は50年前と変わらず若いままの姿で私の前に現れた
「おい覚えているか?君に50年前弁当をあげた・・・」
私がそう言うと彼は淡々とした口調で
「あなたが誰かは覚えてませんが、私の不老不死の話を聞いた人ですね?
皆驚くんですよ、でも信じてくれてもどうしようもないんです」
あの時の彼の息子?孫?私は驚いたが
「今すぐ役所に行こう」
私は彼を役所へ連れて行き役人に事情を話した
「またですか・・・」
役人はそう言うと私の家族と連絡を取り私は家族によって家に連れ戻された
やっぱり今回も無理だったか
私の話を最初は誰も信じてはくれない・・・
50年位たって私の若いままの姿で逢って真実だと気付いても遅い
真実だと主張しても歳をとってボケていると思われる
例え子供のころにこの話を聞いて大人になってからでも
頭がおかしいと思われる
いつになったら私が不老不死である事を世の中の人は信じてくれるのだろうか
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