一方的に従って
そうだ。ただひたすら親に従って言いなりになって何も考えずに<いい子>でいることを求められた奴は、自分より下の立場の奴には同じように求めたんじゃないのか?
一方的に従って言いなりになることを。
それが<優秀な人間>を生み出すのか? 本当に。
その場合の<優秀>ってのは、
<上に逆らわない、ただただロボットのように従順な人間>
ってことじゃないのか?
<ブラック企業>とかってのは、そうやって成立してるんじゃないのか? ブラック企業とやらがはびこって、それで社会は発展したか? いわゆる高度成長期の頃も、労働時間とかは無茶なそれだったかもしれないが、少なくとも、父親の稼ぎだけで家族が食っていけるような感じじゃなかったか?
厳しい労働環境であっても、その分、見返りがあったんじゃないのか?
いや、別に、
『昭和の方がよかった』
とか言いたいわけじゃないんだ。ただ、昭和の頃の方が、『躾が厳しい』とか言われながらも、同時に、それに反発して噛みつくような連中も多かった印象があるんだよ。
もっとも、それが今度は、高齢者施設で職員の言うことに従わなかったり、自分がもう自動車を安全に運転する能力もねえのにその事実を認めずに運転を続けて人を轢き殺したりって形で問題になったのかもしれねえが。
ああでも、それもこれも結局、自分以外の人間を蔑ろにしてるからできることか。そうじゃなきゃ、できないよな。そんなこと。
俺は、リーネにそうなってほしくなかった。リーネが大人になって子供を生んで、その子供を怒鳴って殴って従わせようとしてる姿を想像すると、ものすごく嫌な気分になる。
自分の子供がそんな風にしてるとか、嫌じゃないか。情けないじゃないか。
リーネ……だから俺は、お前に手本を示したいと思う。
『こんな大人になってほしい』
って手本を、自分でやってみせたいと思うんだ。上手くできる自信はないが、前世と今世合わせて百年分の人生経験があるんだから、それでできないってのも、あんまりにも情けなさ過ぎるってもんだよな。
なんてことを、いつの間にかすうすうと寝息を立て始めたリーネの姿を見つつ、俺自身もスーッと眠りに落ちていくのを感じつつ、考えていたのだった……
……と、眠りにつきかけたその時、
「ピキッ!!」
という悲鳴とバササッ!という物音。
罠が作動したんだ。
ああもう! 寝入りばなにこれとか、ホントにメンドクセえ! スーパーや宅配で食材を買えた前世の社会のありがたみを実感するぜ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます