第三十六話 救出大作戦
トウカに頬を打たれたミツキ。
突然の登場に立ち上がったのはアユムだった。
「おい、テメェ!? ナニ勝手に人ン家に上がり込んでんだ、アァッ?!」
アユムはトウカの胸ぐらを掴み、ドンっ、と首を絞めるかのように壁に押し付ける。
「別にいいじゃないか。ボクだって昔はここに入り浸ってたんだ」
「なに言ってンだ、今は敵だろうが?!」
「アユム、ここはミツキの家。静かにして」
「…………ちっ!」
力を緩めるアユムの手を振り払って、トウカは改めてミツキに向き合った。
「ふん……君の真宮くんへの気持ちはそんなものだったか。取り乱すだけ取り乱して、悲劇のヒロイン気取りか」
「違う! 私は、そんなつもりじゃ……そんな」
ミツキは否定しようとするも今の自分がマオが連れ去られたのを悲観して引き籠っていることは事実であった。
「僕は奴等の居場所を突き止めた。真宮くんはボク一人で助けに行く」
「マオの居場所を知っているの?!」
裏返った声を上げて、ミツキはトウカに詰め寄る。
「お願い! マオはどこにいるの?」
「どこだって……それは、教えてやらないよ」
「だったら何で来たんだよ、オマエは!?」
と、アユムが再び怒鳴る。
「コイツの無様な顔を見に来たのさ。その表情が見たかったんだ」
涙を浮かべ懇願するミツキの顔を見てトウカは嫌らしく笑った。
「なんでもするから教えて! マオは、マオはどこ!?」
「そうだな…………じゃあ、まずは土下座してもらおうか」
「え……ど、土下座?」
「そう。ボクはお前たちのせいで家族にも会えず、独りぼっちで隔離されていたんだ、五年間も。それを謝って欲しい」
冷静な口調で言うトウカだったが、心の中では溜まりに溜まった黒い感情が爆発する思いだった。
「…………わかった。それで教えてくれるから」
「止めとけ、ミツキ! やっちまったら終わりだぞ!?」
「なら、いいよ。ボクはもう帰るから」
「やります! やるから……」
ミツキはトウカの前に膝を突いた。
「……YUSAコーポーレーション日本支部」
すると突然、レフィが口を開いた。
「レフィ……今なんて?」
「YUSAコーポーレション、マオくんはそこのいる」
「ちっ、余計なことを……!」
膝たちのミツキの肩に手を置くレフィ。
「トウカ、黙って助けに行くならわざわざ来ないでしょ?」
レフィはトウカの瞳をじっと見つめる。
その吸い込まれそうな黄金色の瞳に、トウカは全てを見透かされているような気がして思わず目線を逸らした。
「でもようレフィ。YUSAって言ったら海外のあらゆる産業を牛耳っている大企業だぜ?」
「……確かに最近は日本にも進出してるってニュースで見るけど」
「アタシでも知ってるぐらい世界的なスゲー会社がなんでマミヤンを……ってか何でそうだってわかる?」
と、アユムが尋ねる。
「だって……レフィは、レフィのパパはYUSAのCEOだから」
◆◇◆◇◆
「…………まぶし……あつっ」
顔にかかる目映い直射日光にマオは堪らずベッドから転げ落ちた。
「いっ……てぇ…………どこだ、ここは?」
ぶつけた腰を擦りながらマオは周りを見渡す。
最低限の家具が置かれた白一色の部屋。
一面がガラス張りの壁からは海が一望できる。
唯一の扉は取っ手がなく、こちら側から開けることは出来なかった。
『マミヤ・マオ』
奇怪な電子音が名前を呼ぶ。
振り返った瞬間、壁際に吹き飛ばされて両手を押さえられたまま身動きが取れなくなっていた。
「か、カイナさん?! どうして貴方が」
『マミヤ・マオ。マミヤ・マオ。マミヤ・マオ。マミヤ・マオ』
マオを連れ去った犯人。
真宮家の家政婦だったはずクロガネ・カイナは赤く点滅した瞳を向け名前を繰り返すとマオに再び襲いかかった。
「やっ……やめろ…………っ!」
衣服をビリビリに引き裂かれ、上半身が露になるマオ。
「う、うわぁぁぁぁあーっ!!」
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