第三十二話 二人の幼馴染み、再会

 マオ捜索班のレフィとアユムは、立ち寄ったコンビニで一休みしていた。


「はぁ……コーヒーが美味しい」


 イートインスペースで快晴の天気を眺めながら購入したアイスコーヒーを呑気に飲んでいるレフィ。

 その隣ではアユムがソフトクリームを食べていた。


 現在の時刻は正午。

 ちなみに今日は平日であり学校は普通に登校日である。

 マオを含めてミツキ、レフィ、アユムは無断欠席だった。


「……ふわわ」


 アクビをしながらコーヒーカップを見詰めるレフィ。

 そんなレフィと遅刻しそうなところを偶然、道で一緒になりマオの捜索を手伝うことになったアユムだったが、レフィのあまりにのんびりとした行動に調子が狂う。


「呑気だな、お前……」

「場所はわかってる」

「知ってんなら向かおうぜ? あの野郎、アタシたちがこんなに心配してるっつーのに」


 本当は学校をサボる口実が出来てラッキーと思うアユムであっな。


「……マオ君はレフィと合体したくないのかもしれない」

「オメーいきなりなに言ってんだよ?」

「アユムはマオ君と合体したい?」

「本当になに言ってんだよ!? んー……まぁ、アタシも初めては好きな人としたいな」


 すっくと席から立ち上がり、アユムは残りのソフトクリームのコーンを口に頬る。


「アユム」

「アユムさん、な……で何だよ、レフィ」

「レフィはレフィちゃん……“足”準備しといて」


 飲みかけのコーヒーと刀の鞘を担いで、レフィはそそくさと出口へ向かう。


「あし…………あっ、ゲホッゲホッ! お前なんでアレのこと知ってんだよっ!? おいッ!」


 アユムは飲み込んだコーンでむせながら、レフィの後を急いで追いかけた。



 ◇◆◇◆◇



 一方その頃。

 真芯神社でマオ、ミツキ、トウカの三人が邂逅する。


「真宮くん、気をつけて。こいつは……ウキョウ・ミツキはとんでもない奴なんだよ!」


 トウカは目の前に現れたミツキに憎しみのこもった眼差しを向ける。


「ちょっと待って、上条さん! 何年か振りでいきなり何を言い出すの? それにどうしてマオと……?」


 小学校以来の再会に一瞬、喜びそうになったミツキだったが、トウカが何故、怒り出したのか分からなかった。


「とぼけやがる。ボクは幽閉されていたってのに……」

「ゆうへい……幽閉?! 幽閉って、転校したんじゃなくて?」

「ボクんちは君たちみたいにお金持ちじゃない一般人だからね。あの戦いの後で“魔王”の事を喋らないように人目のつかないところに隔離されていたんだ。

特にボクは当事者だからね。両親とも離れ離れにされたよ」


 辛かった出来事を思い出し、泣きそうになるのを堪えてトウカは拳を握る。


「ボクのことはいい! ウキョウ・ミツキ、君は真宮くんといる資格はないんだよ!」

「な、なんでそんなこと言うのよ! マオは私にとって大事な……」

「違う。君は奪ったんだ、アカリさんから」


 アカリ。

 その名前を聞いた瞬間、ミツキの表情が固まる。


「あ…………アカリ、お姉ちゃんは関係ない……でしょっ」


 否定するミツキだったが言葉はしどろもどろで、目線もトウカを真っ直ぐ見れず泳いでいた。

 そんな二人のやり取りから自分の記憶を探るマオはただ黙って様子を伺っている。


「ミツキはアカリさんと、とっても仲が悪かったんだ」

「……めて」

「だから、アカリさんが死んで一番喜んだのは」

「やめてって言ってるでしょッ!!」


 マオが聞いたこともない大きな叫びを上げるミツキの声に、反響した神社の木々がざわめく。

 ミツキは泣いていた。


「…………はぁ。真宮くん、アイツはそう言うヤツなんだよ。昔からワガママで何でも自分の物にしないと気がすまない」

「ミツキが……?」

「そう。アイツは優しくするのは自分が満たされたいだけなんだ」

「違う!!」


 逆上するミツキはマオを取り戻そうとベンチに向かって駆ける。


「マオを返し……きゃあっ!?」


 何かにぶつかったような衝撃がミツキを地面に転がした。

 とっさに受け身をとって前を見るが、ただトウカが立ち尽くしているだけで何もない。


「見えないかい? それはそうだろう……なら見せてあげるよ」


 そう言ってトウカは服のポケットからゲームのコントローラーを取り出し、ボタンを押す。

 すると、雲ひとつない天気の空が突如、暗闇に覆われた。


「そしてキミは知らない。どうしてアカリさんが死んだのかも」

「お姉ちゃんが? 何よそれ、どういうことっ?!」

「あの時……ボクたちの町を壊滅に追いやった怪物は再臨した。それを君に止められるかな?」


 マオとミツキは空を見上げる。

 神社に影を作っていたのは、とてつもなく巨大な“悪魔”の姿だった。


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